リレー

初瀬基樹


 先日の運動会ではたくさんのご協力、応援など本当にありがとうございました。おかげさまで晴天のもと、とても楽しい運動会になりました。今年は年長児が10人しかおらず、しかも男の子は3人で、例年に比べると少し盛り上がりに欠けるんじゃないかという不安もありましたが、オープニングのリトミックが始まった途端に、そんな不安はどこへやら・・・。まさに気合い充分!といった感じで、さすが年長さんでしたね。司会などの役割から競技に至るまで、目を輝かせ、とてもいい表情で取り組む姿を見ることが出来て本当に良かったと思います。特にリレーでは、バトンを落としたり、転んだりとハプニングが続出でしたが、あきらめることなく最後まで一生懸命走る姿に心から感動しました。

 リレーの取り組みについては、つくし組のお便りでも紹介されていますが、毎年毎年、ドラマが生まれ、見ていて楽しいものです。近年、全国的に保育園、幼稚園等で競争を避け、みんなで楽しく体を動かしましょうといったレクリェーション的な運動会が多くなってきている風潮もあるようですが、果たしてそれだけでいいのかなという思いもあります。わが園でも「かけっこ」はしますが、ことさらに誰が1等、2等だったというような順位を決めるようなことはしません。それは「かけっこであれば、それぞれが一生懸命走ればそれでいい。あえて順位を決める必要はこの幼児期には必要ない」と考えているからです。

 しかし、リレーは別です。なぜリレーをするのか、わざわざ順位を決め、子ども同士で競わせるようなことをするのか。「かけっこ」も「リレー」も同じ「走る」競技ですが、大きな違いは、リレーは「チームで競う」という点です。リレーについて、私たち保育者間で毎年確認することは、どっちが勝ったか負けたかの「結果」ではなく、いかに力を合わせ、話し合い、工夫し、相手を思いやることができるようになるかといった「取り組みの過程」そのものを大事にしていこうということです。運動会だからといって、運動面だけの成長を願っているのではなく、やはり心の成長も願っているのです。4、5歳ともなれば、トラブルを言葉で調整することができるようになってきます。特にこうした取り組みでは、力づくで自分の意見を通すというわけにも行きませんし、トラブルを避けることも出来ません。ちゃんと自分の主張を言葉で表し、相手の主張を耳で聞いて理解し、お互いが納得するように話し合うといったことが必要になってきます。こうしたことは仲間作りの基本であり、これから人間関係を築いていくための良い機会だと考えています。

 多かれ少なかれ、どの子も「勝ちたい」思いを持っています。その思いが強ければ強いほど、トラブルも起きやすいようです。はじめのうちは、負けてしまうと足の遅い子や、失敗した子を責めることが多いのです。それは一生懸命がんばっている子にとって、当然の姿であり、むしろそういう気持ちを素直に出した方が良いのです。でも、いつまでも人を責めたり、チーム内でもめたりしていても、チームとして速くはなりませんし、やっていても楽しくありません。取り組みの間、保育者は子どもたちに何度も話し合いをさせます。リレーは個人競技ではなく、団体競技であること、だから、みんなで協力しあわなければチームとして速くはならないということ。もちろん、勝ち負けよりもみんなが一生懸命がんばることが何より大切だということに気付いて欲しいとも思っています。でも、やっぱり子どもたちはどの子も「勝ちたい」し、勝てば「うれしい」のです。そうした「勝ちたい」という、それぞれの子がもともと持っている思いを、こうした取り組みを通して、我慢する力、あきらめない力、人を思いやる力、工夫する力、協力することの大切さを学ぶ力へとつなげたいと考えているのです。チームの一人ひとりが自分にできる精一杯のことを一生懸命がんばり、そして、同じチームの子をお互い応援し、励ましあうことで、いつも以上の力が出せる。そうしたら、勝てば喜びは倍以上になるし、たとえ負けても、気分はすっきりしていて、やるだけのことはやったという満足感も得られるという体験をして欲しいのです。いっしょにがんばった仲間とともに同じ思いを分かち合い、味わって欲しいのです。
 
 そうした意味で、今年のリレーでもバトンを落としてもあきらめずに、拾ってまた走り始めた姿や、転んでもすぐに起きて走り始めた姿、負けるのがわかっても最後まで一生懸命走りぬいた姿、負けたことは確かに残念だけど人のせいにすることなく、お互いがんばったねと認め合うことが出来た姿、どれをとってもいい取り組みが出来た成果だったと評価できるのではないかと思います。





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