お宅のお子さん、睡眠は十分足りていますか?
テレビ・ビデオの見過ぎではありませんか?

(2004年度実施の「子どもの実態アンケート」より)

初瀬基樹


 昨年度、みなさまにもご協力頂きました「子どもの実態アンケート」のデータ集計、及び報告が終わりました。この調査は、熊本市保育園連盟加盟園に通う保育園児とその家庭を対象に、主に、テレビ、ビデオ、ゲームなどの影響を含め、現在の子どもたちの生活実態を調査したものです。私もこのデータの集計にかかわり、2月には福岡で開催された「子どもとメディア全国フォーラム」において、その調査報告を依頼され、発表してきました。
 まずは、子どもたちの生活実態の平均値をご覧ください。

熊本市保育園連盟加盟
(平均)

河内からたち保育園
(平均)

平日)起床時間

703

710

休日)起床時間

720

713

平日)朝食時間帯
(食べ始めの時間)

725

733

平日)朝食にかける時間

27

28

平日)夕食時間帯
(食べ始めの時間)

1852

1832

平日)夕食にかける時間

43

46

平日)就寝時間

2140

2139

平日)睡眠時間

9時間23

9時間32

親子の会話(1日)

2時間46

2時間51

平日)テレビ視聴時間(1日)

1時間41

2時間3

休日)テレビ視聴時間(1日)

2時間37

3時間9

保護者のテレビ、
インターネット接触時間

2時間12

2時間31

テレビを意識して
見せ始めた年齢

12ヶ月〜3ヶ月の間

15ヶ月頃


 この中で、特に注目していただきたい点は、平日の平均就寝時間と、起床時間、就寝時間から割り出した平均睡眠時間、そしてテレビ視聴時間です。


<就寝時間と睡眠時間>

 わが園の平均を見ても、夜寝る時間は、だいたい9時40分頃で、起床時間から割り出した平均睡眠時間は、約9時間30分程度です。

 理想的な1日の睡眠時間は1〜2歳で13〜16時間、3〜5歳でも12〜13時間とされています。今回の調査対象である子どもたちは保育園に通っていますので、保育園で1〜2時間お昼寝をしていることを考えても、到底理想的な睡眠時間を満たしていないことがわかります。さらに、乳幼児期など成長期にある子どもたちにとって、睡眠をどれだけとったかの時間だけでなく、いつごろ寝たかという時間帯も重要です。からだの自然な働きからみると、年齢や季節によって多少違うにしても、太陽が沈んで、夜7〜8時ごろに眠りの態勢に入ることによって、真夜中に成長ホルモンの分泌が起こってからだをつくっていくのだそうです。そして、朝は早く起きて太陽の光を浴びることが大切とされています。ですから、夜寝るのが遅いということは、こうした体の自然な働きを乱してしまうことにもなります。


<テレビ、ビデオ等メディアとの関連>

 平日のテレビの視聴時間は約2時間という結果が出ていますが、保育園に通っている子どもたちが家庭で起きて過ごしている時間はだいたい4〜5時間ですので、家にいる時間の半分をテレビ、ビデオに時間を奪われていると言えなくもありません。

 こうしたメディアとの関係でいいますと、テレビ、ビデオ等を長時間見ている子ほど、「寝る時間が遅く」なり、「朝起きるのも遅い」傾向にあります。また、今回の調査から、テレビ、ビデオ等を長時間見ている子ほど、「すぐ『疲れた』という」、あるいは「ケンカやトラブルが多い」、テレビ、ビデオの視聴時間が短い子ほど「イライラがない」という結果も出ています。

 そして、今の子どもたちは1歳半前にテレビ、ビデオを見始めていることもわかりました。近年、小児科医会や各方面から「2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう」という提言が出されていますが、見せる内容にかかわらず、小さい子にテレビ、ビデオ等を見せることは子どもたちの成長に害を及ぼすことがわかってきています。特に、人とのかかわりの面で心配な子が増えているようです。

 脳の発達が著しい幼少時に、テレビ、ビデオによって、さらには睡眠不足によって、子どもたちの健全な成長が阻害されているのです。私たちが子どもの頃は大半の家庭で「子どもは9時には寝なさい」と寝かされていたと思います。しかし、今の日本の社会は大人の生活スタイルに子どもを合わせようとするあまり、あるいは子どもの基本的な生活には無関心な家庭も増えてきたため、子どもたちの心にも体にもひずみが生じてきているように思います。いじめ、不登校、引きこもり、犯罪の低年齢化など、人とのかかわりに関連した問題が多くなってきているのも、こうしたことと関連があるように思えてなりません。

 せめて子どもが小さいうちは、子どもにとって適切な生活がおくれるように家族みんなで協力し合うことが必要なのではないでしょうか。
まずは、ご家族でよく話し合い、本当に見たい番組だけを見るようにし、それ以外はテレビを消すようにする。食事中もテレビを消して会話を楽しむなどして、テレビ、ビデオに時間を奪われないようにする。そして、夜はできるだけ早く子どもを寝かせるようにする。

 出来そうなことから始めてみませんか?





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