なまけもののアリ

初瀬基樹

 「アリとキリギリス」など「働き者」としてのイメージが強いアリですが、実はアリのなかにもなまけもののアリがいるということをご存知でしたか?

 ある大学の研究チーム(確か北海道の大学)が行なった実験によると、通常、アリの群れの80%ぐらいは、私たちが思っている通り、まじめによく働いているのだそうですが、20%ぐらいのアリは、実はただフラフラと遊んでいるだけなのだそうです。そこで、試しにその遊んでいる20%のアリだけを群れから外し、別のアリの集団に入れてみると・・・やっぱり、その同じアリたちがフラフラ遊んでいるというのです。なまけものは、どこにいってもやはりなまけもの。生まれつき本能がそうさせているのかと思いきや、温度や湿度の環境を変えてみると(自分たちの緊急事態になると)、そのなまけもののアリたちが実によく働くようになるのだそうです。さらに、さきほどのなまけもののアリを取り除いた残り80%のアリの群れはというと、みんな働き者なので、さぞかし効率よく働くだろうと思うのですが、今度はそのなかの20%ぐらいのアリがフラフラと遊び始めるのだそうです。おもしろいですね。

 こうしたアリの習性にも、実はちゃんと訳があるのだそうです。ある説によると100%のアリがみんなまじめに働くとすると、確かに見つけたエサを効率よく、早く巣に持ち帰ることは出来るかもしれません。しかし、その見つけたエサがなくなってしまえば、またエサ探しを1から始めないといけません。ところが、80%のアリがエサを運びながら、同時に20%ぐらいのアリがフラフラして遊ぶことにより、新たなエサを発見しやすくしているのではないかというのです。遊んでいるアリがいるからこそ、今あるエサがなくなっても、すぐ次のエサを取りに行くことが出来る。長い目で見れば、全体として効率よくエサを見つけ、巣に運ぶことが出来るのだというのです。つまり「優秀な個体ばかりを集めても、集団としての生産性は最大にはならない」ということなのです。

 なるほど、と妙に納得してしまいました。人間界でも同じことが言えるのかもしれませんね。みんながみんなすぐにまとまってしまうよりも、何人かのあまのじゃくみたいなのがいて、あ〜だこ〜だとごねたりしながら、何度も何度も話し合いを重ねたり、いろんな方法を考えたりして、みんなが納得いくものを考えて創りだしていった方が、結果的に一人ひとりの理解も深まって、はるかにいいものができるということもよくあることです。

「うちの子は遊んでばっかりで・・・」とお嘆きのお母さん方、きっとそのお子さんは人類の為に貢献しているのですよ!




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