基本的な生活をもう一度見直して見ませんか?
初瀬基樹
世の風潮として、子どもが風邪を引かないようにと厚着をさせたり、外遊びを控えさせたり、予防接種を打ったりといった対策には、結構、誰でも気を使うものですが、「病気やケガに負けないような元気でたくましい身体を作っておこう」ということには案外、気を使っていないのではないでしょうか?
病気に限らず、いろんな面で似たようなことがあるように思います。例えば、「習い事、勉強」などをさせる前に、肝心な「意欲」や「好奇心」を育てておくことのほうが大事だとか、「人の気持ちがわかる子」に育てたいなら、まず「自分の気持ちをしっかりわかってもらえたという体験」をしなければ無理だとか、「基本がしっかり出来ていないのに応用ばかりを求めている」というか、目に見えることばかりに気をとられ、基本中の基本を見逃しているようなことが多い気がします。
乳幼児期、まず、重要なのは「健康な身体をつくること」です。
そのためには「生活リズムを整え、3度のバランスの取れた食事をしっかり取るなど、ごく基本的なことをしっかり行なう」ことが大切です。
※ こんなことありませんか?
・ 「うちの子は風邪を引きやすいから・・・」といつも子どもに厚着をさせたり、エアコンの効いた快適な部屋ばかりで過ごしていると、余計に風邪を引きやすい弱い身体になってしまいます。
・ 「うちの子朝起きるのが苦手で、朝が起きられないんです。」というわりには、子どもが大人と一緒に夜遅くまでテレビを見たり、ゲームをしたりして起きているとか・・・
あるいは、
・ 「ご飯のとき、行儀が悪いし、よく噛まないし、味わって食べてくれない。」と嘆くわりには、子どもが思いっきり遊べていない、間食が多いなど、お腹の空くような生活をしていなかったり、食事中にテレビをつけてテレビを見ながら食べさせていたりなど・
意外と気付かないものですが、親が「こんな子どもに育って欲しい」と望んでいることと、「実際の生活でさせていること」に大きな矛盾があることも結構多いものです。
そこで、最低限、以下のことを気を付けてみたらいかがでしょうか?
早起き早寝
「早寝早起き」よりも、「早起き早寝」の生活を心がけましょう。大切なのは「早く起きて、朝の光を浴びること」。朝早く起きて、太陽の光を浴びることで、セロトニンという物質が分泌され、自律神経の働きが促されるのだそうです。
人間の体内周期は25時間だそうですから、24時間の生活では当然ズレが生じてきます。気を付けないと、人間の体は、もともと「遅寝遅起きになりやすい」ものなのです。それをリセットするのが「朝」。前の晩、多少遅く寝ても、「朝早く起きて、太陽の光を浴びること」で体内時計をリセットすることができるのだそうです。
バランスの良い3度の食事
朝食は特にしっかり食べましょう。朝、目覚めたときには、人間の身体は、すでにエネルギーが空っぽの状態です。朝食を食べなかったら、エネルギーが補給されないため、午前中のボーっとしていたり、学校にあがった子であれば、授業に集中できなかったり、大人であれば、仕事でミスをしてしまうのも当然といえます。
「授業中にイライラしにくい子」の9割が「朝食を食べている」のに対し、「イライラしやすい子」では朝食を食べている子は5割以下という調査結果も報告もあるそうです。
また、朝食にある程度の量を食べることで、腸も動き始め、スムーズな排便へとつながります。集中力に欠ける子、意欲がない子、便秘がちな子など、もしかすると朝食をしっかりとっていないことが原因かもしれません。
たっぷり睡眠
現代っ子は、慢性的に睡眠不足です。2004年度に私たちの園も含めて行なった「子どもの実態調査(保育園に通っている子が対象)」では、3歳未満児も3歳以上児も共に、平均9時間半程度しか睡眠時間が取れていないという実態が明らかになりました。
3歳未満児であれば、1日に13〜16時間、3歳以上児であれば、12〜13時間の睡眠が必要です。しかも、成長ホルモンの分泌には、時間だけでなく、寝ている時間帯も関係(夜9時頃〜12時頃にかけてが最も成長ホルモンの分泌が著しい・・・など)しているといわれていますので、やはり、子どもは夜8時か、遅くとも9時までには寝かせたほうが良いようです。(現代の日本人の生活では難しいですが、本来ならば、子どもは7時か8時には寝かせるのが理想的です。)
適度な運動(思いっきり外遊び)
ここ数年、毎年、子どもたちの運動能力低下が叫ばれていましたが、このところ、以前に比べるとその下がり幅が緩やかになってきたそうです。ところが、これは、決して喜ばしいことではなく、むしろ、「これより下がりようがない最低のレベルまで来てしまった」と考えられ、危険な状態であることを指しているのです。
外遊びをすることは、運動が得意になるとかだけでなく、もっと基本的な、「感性を育む」とか、「心臓や肺などを丈夫にしたり、体温調節や、血圧のコントロール、ストレスに耐える能力なども鍛えていく」のです。(起きている時間の大半を保育園で過ごしているわが園の子どもたちは、外遊び大好きですので、あまり心配する必要はないかもしれませんが・・・) とにかく、「外で元気に遊ぶ」ことを心がけましょう。
幼児期の生活習慣は、その後の一生に影響すると言われています。小学校にあがってから直そうと思ってもなかなか難しいようです。
ぜひ、一度、生活習慣を見直し、できる範囲で、できることから始めてみませんか?
※おねしょについて
保育参観、懇談の際に、何件かおねしょについての話題があったようですので、おねしょについて、少しご紹介します。
まず、「夜のおむつはずしはトレーニングできません」
夜のおむつは「取るのではなく、取れるもの」なのです。おねしょには、夜中におしっこを作るのを抑える働きをする「抗利尿ホルモン」が大きく関係しているのです。ですから、個人差もありますが、その抗利尿ホルモンが順調に分泌されるようになれば、おねしょも自然になくなるので、5歳ぐらいまでのおねしょは、まず心配ないそうです。(5歳を過ぎても毎晩どっぷりとおねしょをするようならば、一度小児科医に相談したほうがいいケースもあるようですが)
おねしょ卒業への近道は起こさず、叱らず、あせらず。
「夜中におねしょをするから」と、夜中に子どもを起こしてトイレに連れて行くケースもあるようですが、これは、子どもにとっては夢うつつのままトイレに連れて行かれるので、「布団でする代わりに、トイレでおねしょしているのと同じ」なのです。
「抗利尿ホルモン」は、「眠りのリズム」と大いに関係があり、ぐっすり眠るほど、よく分泌されるそうなので、途中で起こすことは、眠りのリズムを乱し、逆におねしょが長引くことにもなりかねません。
また、おねしょは無意識にしているので、子どもは叱られてもどうしようもありません。逆に、叱られすぎると子どもはストレスが溜まって、発達にブレーキがかかってしまいます。
「いずれ小学校に上がる頃には、おねしょしなくなるさ」と焦らず、のんびり構えて、むしろ、洗濯などが軽く済むようにおねしょマットを使うなりの工夫をすることが大切です。
おねしょ対策
・ 食事を中心とした1日の生活リズムを規則正しく(前半で述べたことです。)
・ 水分、塩分制限について。寝る前の水一杯ぐらいではほとんど影響はありません。もしも、1日トータルで、水や牛乳などがぶ飲みするのが習慣になっているようなら考えたほうが良さそうです。また、料理の味付けが濃すぎて塩分が多いと、尿の量も増えて、おまけに水分を欲しがるといった悪循環を招きます。料理は薄味で塩分を控えめに。
参考文献:
汐見稔幸 『子どもの身体力の基本は遊びです』 旬報社
帆足英一 『「ママ、おしっこ」といえるまで』 プチタンファンブックス
日本保育園保険協議会 『最新 保育保健の基礎知識』 日本小児医事出版社
2004年度熊本市保育園連盟西部ブロック保育士会 『子どもの実態調査(最終報告)』 他
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