携帯電話は危ない!
初瀬基樹
携帯電話の普及で本当に便利な世の中になりました。「携帯はきらいだから持たない!」と言い張っていた園長も、最近になって周りから「連絡がつかなくて困る!」と、ついに持たされるハメになりました。しかし、まだまだ使いこなすまでには至っておらず「不携帯電話」になりつつあります。
さて、携帯電話には「便利さ」とは裏腹に、心配な面もいくつかあります。新聞等でよく騒がれている「出会い系サイト」や「迷惑メール」などもそうですが、それ以前に、携帯電話を「持っているだけで危険!」という話です。しかも、特に子どもが危ないというのです。現に、イギリスでは2000年に「16歳未満の子どもの携帯電話の使用を制限する」と決めたそうです。携帯電話の何がそんなに危険なのでしょうか?
その正体は「電磁波」です。携帯電話の電磁波は電子レンジと同じ「マイクロ波」の仲間に分類されています。電子レンジについては「使用中、中をのぞかないように」とか、「あまり近づかないように」といったことが説明書にも記載されていると思いますが、電磁波の影響を考える場合、携帯電話を使うことは電子レンジをオンにして、電子レンジに頭をくっつけているのと同じなのだそうです。ご存知のとおり、電子レンジはものをあたためるのに使います。これは「マイクロ波」と呼ばれる電磁波(X線などの放射線と本質的に同じ)を利用しています。「マイクロ波」には、ものを温める性質があり、その発熱効果は白内障を引き起こすなど人体への悪影響が明らかになっています。また、マイクロ波は非常に小さいエリアに高いエネルギーが集中してしまう『ホットスポット』という効果もあり、携帯電話を使う場合、電磁波が脳全体でなく、特定の一部分に集中して吸収されているかもしれないというのです。動物実験では携帯電話の電磁波により、細胞のダメージが遺伝子レベルで起こっているという証拠も出てきているそうです。遺伝子が傷つくということは、がんになる可能性を示しています。実際に携帯電話を使用するのが右耳か左耳かによって、脳腫瘍の発生する率が、それぞれ、右側、左側に高くなるという研究結果も出ているそうです。
ところで、「特に子どもが危ない」のはなぜかといいますと、子どもの脳は発達途上にあり、神経経路が完成していないためにダメージが大きく出やすいことが危惧されているのです。しかも、携帯電話の電磁波はちょうど子どもの頭蓋骨の大きさほどの中心部でホットスポット効果が最大になり、その部分にエネルギーが集中してしまうようなのです。人間は、これまで携帯電磁波のようなマイクロ波を直接、しかも頻繁にからだに浴びるという経験をしたことがないため、未知の領域が多いのは確かなのです。安全性が確認されていないにもかかわらず、日本では、この携帯電話の出す電磁波のエネルギーの大きさに対する基準が世界的に見てもゆるやかなのだそうです。アメリカで発売された日本のあるメーカーの機種はアメリカの基準を超えていてリコールされたこともあるそうです。
では、携帯電話を使わなければ問題はないのかというと、そうでもありません。あちこちに建てられている携帯基地局(携帯タワー)からも電磁波が出ているからです。この携帯タワーの出す電磁波の強さに関しても、日本の基準はゆるやかで、住宅地だろうとどこだろうと建てられています。これも他の国では考えられないことなのだそうです。携帯タワーの近隣の人たちは常にこの電磁波を浴びていることになり、体への影響が心配されています。そして、携帯電話を持つ人が一番注意しなければならないのは、電源をオンにしている以上、持っているだけで携帯タワーと交信しているということです。通話はもちろん、メールのやりとりでも電波を発しています。飛行機や病院内などで電源を切らなければならないのはこのためで、通話やメールをしていなくても、電源が入っているだけで、機械などに悪影響を及ぼす可能性があるからです。
また、いちばん電磁波が強くなるのは、発信、着信の瞬間なので、電話をかけるときや、音が鳴り始めた瞬間には一時体から携帯を離すようにした方がよいそうです。見かけは悪いかもしれませんが、イヤホンマイクを使うのも有効なのだそうです。
以上のように、携帯電話は「便利さ」ばかりが宣伝されていますが、こうした事実を私たちも、もっと知っておく必要があるのではないでしょうか?
現段階では「確実な証拠がないから安全」とされていますが、本当にそれでいいのでしょうか。血液製剤によるエイズ問題や狂牛病問題などのように、危険性がわかっていながら隠し続けられたケースもあります。私たち消費者がもっと賢くならなくてはならない時代になってきたのだと思います。
今回は、「保育」とは直接関係ないことのように思われるかもしれない話題ですが、そもそも子どもの育ちに一番大切なのは健康な身体です。身体への悪影響が心配される携帯電話を少なくとも子どもに近づけないようにして頂きたいという思いからあえて、今回このテーマをとりあげました。
そして、特にご注意頂きたいのは、我が園の園児の中にはペースメーカーをつけているお子さんが2名います。携帯電話の発する電波により、ペースメーカーの設定が狂い、正しく動作しなくなる危険があることをそれぞれの担当のお医者さんからも注意されています。どうか、子どものそばで携帯をご使用になったり、軽々しく子どもに携帯を持たせたりなさいませんよう、くれぐれもご注意頂きたいと思います。
(参考文献:『月刊 クーヨン(2002年4月号)』クレヨンハウス発行)