自分の責任で自由に遊ぶ

初瀬基樹

 今年も8月25日(土)、26日(日)と“IPAくまもと”が主催する一日冒険遊び場「おもしろ村」に参加してきました。20年前に発足した“IPAくまもと”、私が参加するようになってから早10年です。メンバーの多くは保育園の園長先生方なのですが、他にも大学教授、スナックのマスター、木工家、建築家、印刷屋さんに専業主婦、(潮谷県知事もメンバーの1人です)などなど、いろんな職業の方が参加しています。近年、スタッフの高齢化が進み、今年度は開催すら危ぶまれたのですが、「子どもたちに本当の遊びのおもしろさを伝えていきたい」、「熊本における冒険遊び場づくり運動の先駆けでもある私たちが、冒険遊び場づくりの追い風に乗っている今、ますます必要となってきているこの時代に止めるわけにはいかないのでは?」「種火まで消してしまったら、次に火をつけるのはかなり難しい」・・・昨年以来、そんな討論を重ねた末、なんとか存続が決定したのです。高齢化を少しでもくいとめようと若手スタッフを引き入れるべく、わが園からも池ちゃんや慎ちゃんを引き連れて行きました。

(興味のあるかたは、ぜひメンバーに加わりませんか?)


 毎年、私は「水の広場」でターザンロープ(2mぐらいのやぐらの上からターザンのようにぶら下がって水の中へとダイビング・・・)を担当しています。このターザンロープではいろんなドラマが生まれるので毎年とても楽しみです。大人でも初めはちょっと怖いのですが、一度やると病みつきになるほどの楽しさです。今年は、わが園からも何組か親子で遊びに来てくれて、貴行君、健太郎君、颯翔くんがチャレンジしました。みんな最初は真顔で少々引きつりながらでしたが、成功すると満面の笑みで「もう一回やる!」と次からは余裕でチャレンジしていました。
 

 さて、今年、私が一番印象に残ったのは、ダウン症であろうと思われる障害を抱えたお子さん(といっても少年ではなく青年)のチャレンジでした。付き添いの方から、「80キロぐらいある子どもでも大丈夫ですか?」と質問され、80キロもある子ども?と思いましたが、大人でも大丈夫なので、「大丈夫ですよ。」と答えるとしばらくしてやってきたのがその彼でした。確かに80キロぐらいありそうな大柄な体で、ニコニコしながらやってきたものの、やぐらにのぼりはじめると、ガクガク震えているのが見ていてわかりました。下から「だいじょうぶ?」と尋ねられ、引きつった笑顔で手を振っていましたが、いざ、自分の順番がくると、もう、それはそれは緊張でガチガチになっていました。足だけでなく、全身ガタガタ震えて、スタートするための足場に足を乗せることさえもなかなか出来ないほどでした。バーに手を伸ばし、バーを握ろうとするのですが、もう、緊張はピークに達していて、周りからのアドバイスも耳に入らないようでした。私も内心、大丈夫かな?と思いつつ、様子を見ていたのですが、あまりの緊張ぶりに、下から見ていた付き添いの方が、「やっぱり、やめなよ!危ないよ。怖いんでしょ。もう降りておいで。」とチャレンジを止めるように声をかけ始めました。

 本人もどうしようか迷っているようでした。下からは「いいよ、いいよ。階段から降りておいで」と声がかかります。私は、人に言われてではなく、自分で決めるべきだと思ったので、「どうする?やる?やめる?」と聞いてみました。すると「う〜、男だ!(俺も男だからここで止めるわけにはいかないという思い?)やる!」と答えたのです。本人がやる気なんだから、なんとかやらせてあげようと思い、万が一、ぶら下がったときに落下して大ケガをしないようにと、池ちゃんと2人で彼の下にまわり(80キロの体が落ちてきても支える自信はありませんでしたが・・・)彼の足を支えながら「よし、いいよ!一度ぶら下がって」と声をかけました。うまくぶら下がることが出来たので、そのままスタート・・・見事に成功しました。周りから拍手喝采を浴びて、本人もガッツポーズで「やった!」と笑顔を見せました。付き添いの方も大喜びで「見直したよ!すごいよ!男だったね」と大絶賛。手伝いに来ていたYMCAの学生さんも「超、感動した・・・。」と涙を流していました。本当に感動的な場面でした。


 「自分の責任で自由に遊ぶ」これは、冒険遊び場でのルールです。遊びはちょっとぐらい危ないことのほうがスリルがあって楽しいのです。「でも、ケガしたら誰が責任取るの?」という大人たちの過保護な思いで、「危ないから・・・」と、どんどん子どもたちの周りからおもしろい遊びが奪われていっているのです。

 「するか、しないか」も自分で決める。自分でするからには、多少ケガをしたって、人に文句を言ったり、人のせいにしたりしない。だからこそ、自由に好きなことができる。もちろん、人に迷惑をかけてはいけない。本当の自由というのは、自分の好き勝手にやることではなく、他人のことも考えて、やるからには、当然のこととして、「自分の行動には、自分で責任を取らなければならない」のです。だから、「自分の責任で自由に遊ぶ」なのです。


 これは、いろんなことに当てはまるのかなあと思います。夏休みも終わりになり、我が家においても、子どもたちの宿題が気になるのですが、「子どもの宿題なんだから、親が必死にならなくても・・・やらずにいて、後で、泣きついてきても、それは自業自得。先生に怒られるのも、成績下がるのも、自分の責任で・・・」と頭では思いつつ、ついつい口うるさく「宿題終わったのか?」と声をかけてしまうのでした。

 




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