進級、新入園おめでとうございます。
初瀬基樹
昨年度から保育の形態を少し変え、3・4・5歳児が幼児クラスとして一緒に生活することになりました。同年齢での活動も必要だと考えて、クラスとしては年齢毎に分けていましたが、大半の生活は3・4・5歳で一緒に過ごしてきました。それと同時に、保育室の一室を食事ルームとし、お昼の一定時間内ならば、自分で好きなときに自由に食べに行くことができ、また、自分で食べることのできる量を自分で配膳するという形式にもしました。とにかく、昨年度は初めての取り組みでしたので、途中何度もこれでいいのか、もっとこうした方が・・・と職員会等で議論を重ね、できる範囲で改善したりしながら、なんとか一年間が過ぎました。この年度末には、みなさんに家庭保育をお願いし、全職員で園内研修を行なわせて頂きましたが、その中で、このように保育形態を変えたことにより、「子どもたちの姿はどう変わってきたのか」をしっかりおさえておく必要があると、職員がそれぞれに意見を出し合いました。このことについて、少しみなさんにもお知らせしておきたいと思います。
◇3・4・5歳が一緒に過ごすことになったことについて
とても自然な形で異年齢のかかわりが生まれている。大きい子が小さいこの面倒をみたり、遊びの中では、順番やルールを守らないと遊びに入れてもらえないなどの厳しさもあったりして、保育者がルールを指導するより、経験を通して遊びのルールを学ぶ良い機会になっているようだ。
ずっと以前に縦割り保育(異年齢保育)を試みた際には、上の子が下の子に引っぱられてしまい、上の子が幼い姿を見せることがあったとの反省が残っていたようだが、昨年度は区分が年齢毎であったこと、それぞれの年齢での活動、遊びも充分に行なったことで、これまで以上に、年長さんは「園の中では自分達が一番大きい」ことを体験を通して実感することができ、その自覚が、年長児らしいしっかりした姿に結びついていったのではないか。年中さん、年少さんもそれぞれに、お兄ちゃん、お姉ちゃんの姿を間近で見ているためか、良い影響を受けてしっかりしていたように思われる。また、上の子たちから刺激を受けながら一緒に遊ぶ機会が多かったためか、例年より保育者を独占しようとする子も少なく、子ども同士でよく遊んでいる姿がみられた。
複数の大人がかかわることで、子どもたち一人ひとりを違った角度から捉えることができ、また、保育者のかかわりも多様になり、子どもに合わせた柔軟な対応ができたのではないか。特に、運動会への取り組みなど、複数の大人がかかわることで、得意な子、苦手な子などへ同時に分けてかかわることができ、結果として、どの子もじっくり取り組めたのではないか。
◇食事ルーム、食事時間、バイキング形式について
食事ルームを別に作ったことで、これまでの午前中の活動後の片付け、ご飯の用意、ご飯、片付け、掃除、昼寝の用意、昼寝、といった慌しさからは解放され、生活がスムーズに流れるようになった。子どもたちも遊びを中途半端なところで終わらせること無く、ある程度満足するまで遊びが続けられるようになったのではないか。また、それにより、自分できりをつけて、意識も食事に向けることができたのではないか。
自分で食べられる量を自分で配膳することは、好き嫌いの助長につながりはしないかという不安もあったが、ほんのわずかな一切れでも自分で「これだけ」と決め、食べることにより「残した」ではなく、「食べた!」という達成感を得る事ができ、次の機会もまたがんばろうという意欲につながっていたのではないか。また、食の好みは年齢によっても変化するので、もっと長い目で見て食事が嫌な思い出にならぬよう、「楽しい食事」を心がけることが大切ではないか。
当初から「自分で決める」という場面を多くしようという目的があってこうした取り組みが行なわれたのだが、ねらいどおり、他の生活の場面でも、自分で考えようとする姿が多くみられるようになったのではないか。トラブルなどが起きても自分達で話し合い、解決しようとする姿が増えてきたのではないか。などとといったことが出されました。
全体的にはうまくいっているように見えますが、課題もたくさん出てきました。例えば、食事時は特にバラバラに食べるので、大人の目がしっかり行き届かず、マナーが悪くなってきているのではないかとか、時計をみても時間の感覚がわからない年少さんにとっては時間内に自分の行動を予測して「決められた時間に間に合うように行動する」というのはまだ少し難しかったのではないか。複数の大人がいることは、誰かが見ているだろうと気を抜いてしまい、結果的に、誰も見ていなかったという事はなかっただろうかなどなど。
これらの課題をしっかり認識した上で、今年度の保育につなげていこうと思います。
新年度早々から少々堅い文章になってしまいましたが、こうした保育のこと、その他なんでも構いませんので、気軽にぜひ、おうちの方々のご意見等もお聞かせください。
保育園は単にお子さんをお預かりする場所ではなく、「おうちの方々といっしょに学び、考え、育ち合っていく場」であり、私達保育者は「子育てのパートナー」でありたいと願っています。