子育ては「いい加減」が「良い加減」!?

初瀬基樹

 進級、新入園おめでとうございます。 

 昨年の今頃は、本格的な縦割りクラスがスタートして、どうなることかと心配しながら迎えた新年度でしたが、この一年で、子どもたちは私たち大人の心配を見事に吹き飛ばすほど立派に成長してくれ、私たち保育者にとっても実りの多い一年でした。2年目となる今年は、昨年の保育をさらに深めながら、子どもたちにとってより良い保育を追及していきたいと考えています。

 園児数の減少に加え、3歳未満児の激減で、保育園の運営はさらに厳しさを増します。60名定員のわが園ですが、10名以上も少ない49名でのスタートです。正職員が2名少なくなりましたが、新規採用もできないような状況です。

 そんななかでも、子どもたちにとって、おうちのかたがたにとっても「もうひとつの家庭」と思えるような温かみのある保育園にしていきたいと思いは変わりません。どうぞ、今年度もよろしくお願いします。

 
 さて、「子育ては、いい加減が良い加減」というタイトル。これは私が考えたわけではありません。だれが言ったのか定かではないのですが、耳に残っています。カナダの子育て支援の基本理念として有名になった「ノーバディ イズ パーフェクト (はじめから立派な親はいない・子育ては完璧でなくていいんだよというような意味)」という言葉もあります。最近になって、これらの言葉が、本当にそうだな、もっと肩の力を抜いて、子育てを楽しむ余裕が欲しいなと思います。
 

 一昔前によく言われたのは「親はなくても子は育つ」という言葉でした。親は仕事が忙しくて、子どもにかまっている暇なんかはなかった。しかし、地域には自然や、兄弟、親戚、近所の人たちなど、自然や人とのかかわりがいっぱいあって、子どもは地域の中で、自ら育っていける環境がありました。

 ところが、現在の子育て環境には、地域での子育て力は低下し、子育てというと「個々の家庭の親次第」みたいな感じになってしまっています。少子化の影響もあってか、「いろんな個性があっていいじゃない」という価値観から、1人の子に「何でもできるパーフェクト人間」になることを求められるようになってきているのではないかと思います。

 子も大変ですが、親も大変です。親の責任が重くのしかかってくるから、あれもこれも子どもにさせなきゃと思うし、反対に、そう思えば思うほど、うまくいかない子育てにイライラしてしまったり、育児を放棄したくなってしまったり・・・。


 完璧を求めるからおかしくなってしまうのです。「子育てはいい加減が良い加減」と呪文のように唱えてみるともっと肩の力が抜けていいのかもしれませんね。


 子どもとの距離をあんまり縮めすぎずに、一歩離れて、「子どもっておもしろいなあ」って見るようにすれば、子育てももっと楽になるんじゃないかなと思います。

 もともと、大人と子どもは異文化の世界に生きているものだと思います。子どもの世界に大人の文化を押し付けて「小さな大人」を作ろうとするのではなく、「子どもは子どもらしくいっぱい遊んで、今を楽しみなさい」ぐらいに考えたらいいんじゃないのかなと思います。

 そんなに長くもない経験ですが、保育という仕事をしてきて、我が家の子どもたちも見てきて、「今を充分楽しんだ子どもは、必ず自分から次の段階へ進む」と確信するようになりました。うまく説明できないのですが、小さいときにいっぱい甘えて、愛情たっぷりに優しく接してもらった子は、かならず大きくなるにつれて、下の子に優しく接するようになりますし、絵本や紙芝居も、くどいくらいに、繰り返し繰り返し読んでもらって、満足して別の本を見つけるようになりますし、遊びなんかもそうですよね。おんなじことを繰り返しながら、ちょっとずつ高度なものを求めるようになっていく。なんかこういった普遍的な法則みたいなものを感じます。

 大人になるために子ども時代があるわけではありません。子ども時代を存分に生きることで子どもは自ら大人になっていくのだと思います。もっと言うなら、小学校のために保育園があるわけでもないのです。小学校に行って困らないようにと今から勉強をなどとは考えない方がいいと思います。保育園の間は、めいっぱい遊んで、遊びの中から、ともだちとの付き合い方を学んだり、不思議なこと、おもしろいこと、集中できることを見つけたりして、「意欲」を育てておくことが大切なのかなと思います。「意欲」が育っていれば、多少小学校に入学して出遅れたところで、すぐに取り返しがつきます。

 「今」が楽しければ、子どもは未来に「夢や希望」を持つことが出来るのです。

 「過ぎたるは及ばざるが如し」何でもやってみるのはいいことだけど、やりすぎると返ってまずい。何にせよ、ほどほどが一番いいのかもしれません。

 これからも一緒に子育てを楽しんでいきましょうね。




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