劇場ごっこについて

初瀬基樹

先日は「劇場ごっこ」に多数の方々のご参加を頂きまして、本当にありがとうございました。

 この「劇場ごっこ」は、他の園では「生活発表会」とされているところも多いように、普段の保育園の生活で子どもたちが身に付けたことなどをおうちの方々に見て頂く機会でもあります。園によっては、歌や劇などの他にも、ダンスや、楽器演奏などを行なうところもあるようですが、わが園では、「劇」を中心に子どもたちのいろんな「表現」をテーマにしています。(「表現」というと幅が広すぎるかもしれませんので「身体表現」としたほうがよいかもしれません。絵や造形などの表現に関しては3月に「作品展」を予定しています。)

 この「劇場ごっこ」では、あくまで「子どもたち一人ひとりが主人公」という立場にたって「子どもたち自身が行なうもの」でありたいと考え、全体を「ごっこ」として、チケット切り、司会、幕間なども子どもたちが行なうようにしています。もちろん、それまでの取り組みにおいても、保育者が「今年は〜をします。○○くんは〜の役、△△くんは〜の役、□□ちゃんは〜の役・・・」などと一方的に決めてしまうのではなく、題材選びの段階から、それぞれの役決め、セリフ、動きなどなど、全般に渡って、できるだけ子どもたちの思いを大切にし、子どもたち自身が自分たちでやりたいものを考え、みんなで話し合いながら決めるようにしています。



 もう少し、具体的に取り組みの様子をご説明いたしますと・・・

取り組みについて

 園では年間を通して、子どもたちと一緒にいろんな絵本やお話を楽しんでいますので、普段から子どもたちは「ごっこ遊び」として、お話の世界を再現して遊んでいます。そんなとき、保育者は子どもたちがそれらのイメージを持ちやすいように、あるいは、もっと遊びがおもしろくなるようにと、環境を少し整えたり、お面や、何にでも応用の利く布などを置いておいたりします。

 こうした子どもたちから生まれてくる「ごっこ遊び」は普段から楽しんでいるのですが、劇場ごっこの取り組みでは、普段のそうした「ごっこ遊び」から、少し「劇遊び」へと発展させ、お客さん(普段の保育のなかでは見たい子どもたちがお客さん)を意識しての「劇」へとまとめていくようにしています。これはなかなか大変なことですが、保育者の腕の見せ所でもあります。なんと言っても子どもたちの原動力は「楽しい」と感じることですから、「させられる」ものでは全くおもしろくありません。「保育者自身も楽しみながら取り組む」ことを大事にし、子どもたちの楽しんでやっている姿を、見ている側にも楽しんで見てもらえるような演出を心がけています。

具体的に年齢毎での取り組みで大切にしていることをあげますと、

 未満児クラスでは、特に「場所」や「雰囲気」の違いを敏感に感じ取るため、なかなか普段の姿をお見せするのは難しいことです。ましてや近くにおうちの方がいらっしゃれば、なおさらそこから離れて子どもたちだけで何かするというのは、この年齢では相当に難しいことです。ですから「おうちの方と一緒に」ということを基本に、わらべうた遊びなどの普段の保育で行なっている遊びを取り入れ、安心して、お互いに楽しく参加できるようにしています。

 3歳児(実年齢3~4歳)では、まだまだ自分達自身が「ごっこの世界」にいるので「お客さんに見てもらう」ということまではあまり意識せずに、普段のごっこ遊びのように展開されていきます。保育者の演出次第で面白い劇(?)もできるようになります。とにかく、やっている子どもたち自身が楽しめるように、そして、それを劇として保育者がうまくリードしていくことが必要なのだけれども、保育者ばかりが目立ってはならず、子どもをいかに引き立てるか、それには子どもたちそれぞれが思い描いているバラバラなイメージをうまく共通のイメージにしなくてはなりません。何でもやりたがる意欲満々の子どもたちの表情をいかにお見せできるかということが大切なポイントになってきます。

 4歳児(実年齢4~5歳)になると、周りの世界が見え始め、「お客さんがいる」ことが分かってくるために、返ってそのことを意識しすぎて本来の力が出せなくなってしまう年齢でもあります。つまり、「うまくやりたい自分」と、「うまくできないかもしれない自分」が見えてくるために、自分の中で葛藤が起こります。「失敗するかもしれないという思い」や、「恥ずかしさ」が勝ってしまい、力が出し切れないことが多いのもこのぐらいの年齢の特徴だと思います。この葛藤をくぐりぬけ、「恥ずかしいけどがんばろう!」「失敗してもいいから、思い切ってやってみよう!」と子どもたちが思えるような援助が非常に大切になってきます。

 5歳児(実年齢5~6歳)ともなると、大半の子が「演じる楽しさ」と共に「声が小さいと後ろの人まで聞こえないかも」といった「見ている人」の身になって考えられるようになってきます。また、(もっとおもしろいものにしよう)との思いから「こうした方が面白いかも」「こんなセリフを入れたら?」「こんな動きにしたら?」など、いろんなアイディアも生まれてきます。しかし、説明してもみんなに理解してもらえなかったり、自分が思っていることをみんなも同じように思っているとは限らず、意見のぶつかり合いも生じたりしてきます。そうした、それぞれの思いをみんなで出し合い、話し合いながら、一つのものにまとめていかなくてはなりません。みんなが納得できるように、それぞれの意見をまとめながら一つのものを創りあげていくという難しさが出てきます。でも、それが5歳児の保育の醍醐味でもあるのです。

 少々、保育者側からの見方に偏ってしまいましたが、「こんなことを配慮しながら取り組んでいるのですよ」ということをお知らせしたくて、思いつくままに書いてみました。言葉足らずで誤解を招くかもしれませんが、冒頭でも書いているように、あくまで「子どもたち一人ひとりが主人公」であり、「決まったことをやらされるの」ではなく、「自分達で考え、工夫し、やりとげる」ものであってほしいと思っています。

 もちろん、すでに連絡ノート等でお伝えしてあるかと思いますが、ここにはとても書ききれないほどの担任それぞれの思いや援助、子どもたちの思い、姿、などがあるかと思います。

 どうぞ、おうちの方々からも、ご覧になったご感想、ご意見、何でも構いません、気軽にお話頂ければと思います。




河内からたち保育園のホームページへ