TVが子どもの脳を壊す
初瀬基樹
以前にも、テレビ、ビデオを小さな子どもに長時間見せるのは危険だというお話を紹介したことがありますが、最近、さらにそれを裏付ける研究が発表されたので、それをご紹介したいと思います。
また、「AERA」(朝日新聞WEEKLY 2002,7,15)にも同様の記事が掲載されていましたので、おおまかに内容を紹介致します。
現在、小学校の年間授業時間は実質約700時間。もしも家でテレビを1日2時間見たとすると、年間で730時間見たことになり、授業よりテレビ視聴時間の方が長いことになります。実際は1日2時間以上テレビを見ている家庭が多いことを考えると・・・。
例え、教育用であろうと何であろうと、「内容」よりも、テレビやビデオ、ゲーム、パソコンなどの電子メディアの画面に向かう「時間」に問題があるようです。脳は、特に脳構造が決まる8歳〜10歳までの間は、「双方向の刺激(多くの場合、母親とのコミュニケーション)」によって健全に発達していきます。しかし、こうした電子メディア等からは「一方的な、それも強い刺激」しか得られません。さらに、そうした一方的な刺激を受け続けることで、脳は先ほど述べた「ゲーム脳」になっていき、前頭前野の働きが低下、すなわち「考える力」が低下し、攻撃的になったり、言葉の発達が遅れたりして人とのコミュニケーションがうまく取れなくなったりするようです。
最近は学校でもADHD(注意欠陥・多動障害)の急増が騒がれています。また、乳幼児においても自閉的傾向を示す子が増えているというのも、遺伝的要因だけでは説明がつきません。今やテレビ漬け環境が何らかの影響を及ぼしていると考えざるを得ないようです。見ている、見ていないに関わらず、テレビがつけっぱなしのご家庭も多いのではないでしょうか?
ではどうすればよいのでしょうか?答えは、単純に「テレビ等を見すぎないこと。」テレビを見るなら、その3〜5倍の「外遊び」をすること。
現に、福岡の保育園等で1年間、月に1日だけの「ノーテレビデー」を実施したところ、効果はてきめんに現れ、叩く、蹴るといった攻撃的な行動が減ったり、「ヤダッ」「死ね」と単語でしか話せなかった子が文章の形で話せるようになったりなどの報告が寄せられているそうです。当初、「テレビがないとうちの子はパニックになる」と心配していたのは親の方で、いざ実施してみると、子どもはあっけないほど簡単に順応できたそうです。要は、私達大人自身が「テレビから離れる力」をつけることが大切なようです。
過剰な音や光の刺激がない空間や「退屈する自由」を経験すると、子ども達は始めて自分で自発的に考え遊びを始めます。ゲーム脳になっていた大学生が3ヶ月間お手玉を続けた結果、脳波が正常に戻ったという実験結果もありました。
まずは試しに1日だけでもテレビなどのスイッチを切ってみませんか?