できる!!と思ったら、デキル!


初瀬基樹
 

 先月の運動会は天候にも恵まれ、さわやかな秋の空の下で、とてもいい運動会になりました。繁忙期にもかかわらず、たくさんの方にご来場いただきまして、本当にありがとうございました。
 
 
 さて、今回の取り組みの中で、年長さんと合言葉のようなものが生まれました。タイトルにもある「できる!!と思ったら?」「デキル!」です。

 これは「やる前から“できない”と思っていたら、自分の持っている本当の力が出せないから、ぜったいできる!やってみせる!という気持ちでやってごらん。」という話をするなかで自然と子どもたちとの合言葉のようになっていったものです。


 運動会のプログラムに添付しておりました『からたち保育園にとっての運動会とは』にも書いていることですが、運動会は子どもたちの成長を“見てもらう場”ではありますが、“見せるためだけ”に行うものではありません。私たちの考える運動会は、通常の保育の延長にあるものであり、「目標」にもなりますが、「節目」でもあり、また「きっかけ」でもあると思っています。

 たくさんの人が見に来るのですから、当然、子どもたちはそれぞれ、できるようになったことをみんなに見てもらいたいと思うでしょうし、そのために、がんばろうと思う子も多いでしょう。しかし、私たち保育者にとっては、単に「できた、できなかった」ではなく、それぞれの子が「どのように取り組んで出来るようになったのか」という、それまでの過程や「どんな気持ちで取り組んできたのか」、「今後どのように取り組んでいくのか」といったことの方を大事にしたいと思っています。
 
 
 今年の年長さんも、竹馬、竹のぼり、板越え、クライミングウォール、跳び箱などなど、いろんなことにチャレンジしました。これらのことが、できるようになることは、私たち大人にとっても、もちろんうれしいことです。しかし、もっとうれしいのは、子どもたちが自分から「やってみよう!」と挑戦する気持ち、そして、最初はできなくても、「できるようになりたい!」と強く思う気持ち、そしてそのための努力をする姿が見られるようになることです。

 子どもは、簡単すぎても、難しすぎても“やる気”が起きません。「ちょっとがんばれば、できそう!と思ったときにやる気が出てくる」ということはわかっているのですが、その、“ちょっと”の頃合いが、子どもによって違うので難しいのです。当然、今年の年長さんのなかにも、はじめから自分で目標を決めて努力し、できるようになって、また次の目標を設定し・・・と黙々とがんばる子もいれば、「できないからやりたくない」と苦手意識を持っている子もいました。そんなときに「最初からできる人はいないよ。できるようになりたいのなら、やっぱり努力しなきゃ。自分で“できない”と思っていたら、いつまでたってもできるようにはならないよ。きっとできる!と思って練習したら、いつかきっとできる。あきらめないで努力することが大事」ということを子どもたちに伝えたかったのです。


 近年、失敗を恐れて、はじめからチャレンジしない子どもや、大人になってからでも、何事にも消極的であったり、面倒くさいことからはすぐに逃げ腰になったり、ちょっと注意されただけでかなりのダメージを受けてすぐ仕事を辞めてしまったりといった話題をよく耳にします。現代人には「精神的なたくましさ」が足りなくなっている気がしませんか?


 これは私たち大人が、これまで「危ないから、難しいから、あとが大変だから・・・」と、「あれはダメ、これもダメ」と子どもたちがせっかくやろうとしたことでも、子どもたちから遠ざけてきてしまったからではないでしょうか?せっかくのチャレンジ精神を私たち大人が潰してきてしまったのではないかという気がしてならないのです。

 もっと、「失敗してもいいんだよ。」「失敗は成功のもと!」と励まし、「子どものときには、たくさん失敗していいんだ。トラブルを起こして怒られたっていいんだ。悩んで葛藤する体験も大事。そうやって育った方が、精神的にもたくましくなって、人間としての幅が広がる」ぐらいの気持ちであたたかく見守ってあげられるような社会にならなければいけないような気がします。


 先日、「体育指導されている子よりも自由に遊んでいる子の方が運動能力は高い。」というデータが出て、やっぱりと思いました。やはり、子どもたちにとって大事なのは「意欲」です。「させられて」ではなく「自分から」という姿勢が何より大切なのです。特に乳幼児期には遊びを通して「やってみたい」、「できるようになりたい」という意欲を育み、たくさん失敗しながらも「がんばったらできた」という経験をたくさん積んでほしいと思うのです。


 運動面だけでなく、学習面においても同じことが言えるはずです。興味のあることを見つけ、意欲、探究心が育っていれば、自ら探し、覚え、考えるようになっていきます。反対に、おもしろいと感じなければ、いくら教えられても覚える気すらおきない・・・。


 園内研修で、世界の保育についても学んだりしているのですが、世界の流れからしても、子どもの興味や意欲を中心に据えて、子どもが主体的に学んでいけるような環境を整えるという保育の方法が主流になってきているそうです。これまでの日本のような一方的に教え込むスタイルでは子どもの成長は望めない、むしろ、反社会的な人間を育ててしまうというようなデータもあるそうです。「子どもは生まれつき、有能な学び手である」ととらえ、遊びながら、いろんなことに興味を示し、様々なことを学び、経験を通していろんなことを身に付けていくのだということに、もっと周りの大人が気付き、それを援助していく必要があると思います。








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