いいところさがし
初瀬基樹
今年も8月のお盆前に、卒園児を中心とした地域の子どもたちを連れて2泊3日のキャンプに行ってきました。
14回目となったこのたんぽぽキャンプ、今年の参加者は小学生44名、スタッフ20名、総勢64名でした。初日は夕方から大雨になってしまい、どうなることかと思いましたが、2日目、3日目は天気も崩れることなく、また、大きなケガや病気もなく、楽しい思い出を胸に無事に帰ってくることが出来ました。
継続して参加してくれているボランティア・スタッフや新しく参加してくれたスタッフにも支えられ、参加者みんなで楽しいキャンプをつくりあげることができたと思っています。
さて、今回、このキャンプに参加した子どもたちには、同じグループになった友達の「いいところさがし」をしてもらいました。
このところ、全国的に「いじめ」関連のニュースが多く、私自身、何とかできないものかと、モヤモヤした気分でした。
今さら、子どもたちに「いじめはいけない」と教えたところで、いじめが良いことだなんて思ってる子は誰もいないはずですし、「いじめた側を厳重に処罰すべきだ」なんて論調もありますが、それだけでいじめがなくなるとは思えません。どちらも、本質的な解決にはならない気がしています。
そもそも、なぜ「いじめ」が起きるのでしょうか?
魚の世界でもいじめが起きるということを、以前、さかなクンが新聞に書いていたそうです。
「 ・・・ たとえばメジナは海の中で仲良く群れて泳いでいます。せまい水槽(すいそう)に一緒に入れたら、1匹を仲間はずれにして攻撃(こうげき)し始めたのです。けがしてかわいそうで、そのさかなを別の水槽に入れました。すると残ったメジナは別の1匹をいじめ始めました。助け出しても、また次のいじめられっ子が出てきます。いじめっ子を水槽から出しても新たないじめっ子があらわれます。
広い海の中ならこんなことはないのに、小さな世界に閉じこめると、なぜかいじめが始まるのです。同じ場所にすみ、同じエサを食べる、同じ種類同士です。 ・・・ 」
上記のメジナのように狭い空間に押し込められて集団で生活している、あるいは軍隊などのように常に上から抑圧されている場合など、過度の緊張や競争が強いられているような状態下でいじめが起きやすいと言われています。ストレスによるイライラ、もやもや、うっぷんなどの矛先が、弱者へと向けられてしまうのです。
今の日本の子どもたちを見ていて、なんだか窮屈そうで、毎日が楽しくなさそうで・・・。きっとストレスを発散する場もないんだろうなと感じます。
もっと、「友達と一緒にいることがとにかく楽しい」とか、「勉強が楽しい」とか、「部活が楽しい」とか、「趣味や習い事が楽しい」とか、「家族と話すことが楽しい」とか、毎日が楽しく過ごせれば、いじめなんて問題も起きないだろうにと思います。
どうやったら毎日が楽しくなるんだろう、どうやったら友達とうまくやれるんだろう、そんなことを漠然と考えていて、思いついたのが、この「いいところ探し」でした。
これまでのキャンプでも「グループタイム」として、グループで集まって、今日1日を振り返ってみるという時間を設けていました。でも、そこで出てくる意見は大抵、「男子のテントが汚い」とか、「話し合いの時にうるさい」とか、困ったことやマイナスの言葉ばかりだったのです。もちろん、困ったことや次からこうしてほしいことを出し合ってみんなで考えることも大事です。しかし、今回は、とにかく友達の「いいところ」をグループの全員分、必ず1日1個は探すことにしました。
1日目は、よく意味が伝わっていなくて、書けなかったというグループもありましたが、2日目に1日目の分と合わせて書いてもらうことにしました。探せば、必ずあるものです。その子のいいところ、自分がしてもらってうれしかったこと。・・・「○○ちゃんは、自分のゴミじゃないのに拾ってゴミ入れに入れていた。」とか、「プールで転んだとき、だいじょうぶ?って声をかけてくれた。」とか「やさしいけど、怒るときには怒っていた。」とか「小さい子の面倒をしっかりみていた。」とか・・・。ささいなことでも、ちゃんと気に留めて言葉にすることが大事なのだと思います。
欠点は見つけやすいものです。しかし、欠点を追求すれば、つい「おまえだって・・・」と相手も欠点を探すようになってしまいます。だから、あえて、友達のいいところを探してもらったのです。今回は、とてもうまくいったと思います。もちろん、多少はケンカもありましたが、グループの仲が良くなり、キャンプ全体を通していい雰囲気でした。やっぱり、誰でも人に褒められると悪い気はしません。良い気分になって、相手のことも褒めてあげたくなるものです。
最終日、最後の集まりのときに、それぞれのいいところを書いた紙を一人一人にプレゼントしました。これまで自分でも気付かなかったような「ぼくってこんないい所があったんだ」ということにも気付いてもらえたのではないかと思っています。
ぜひ、それぞれのご家庭でも、お子さんの「いいところ探し」をしてみてください。
|