『子育てに悩むあなたへ チョッといい話』 

(三輪睦雄先生の著書より)


初瀬基樹


  早いものでもう3月。つくしさんはもうすぐ1年生、残りの保育園生活を充分に楽しんでほしいものです。

 さて、先日、三輪睦雄先生という方のお話しを聴く機会がありました。三輪先生はもともと小学校の先生をされていて、その後、児童相談所一時保護所に勤務されていた方です。現在も常勤ではないそうですが、児童相談所のお仕事をされながら、全国を講演等で飛び回っておられます。

 その三輪先生の著書『子育てに悩むあなたへ チョッといい話』の中から、少しご紹介したいと思います。とても共感できる部分が多く、お伝えしたい内容も多いのですが、ぜひ、興味のある方は本を読んで頂くことにして、一部分だけご紹介します。

(以下引用)



どの子も「み・は・ほ」の精神で育てる

  認める   励ます   ほめる


叱り方3原則

1. やったことを叱る(人格否定にならないように)
2. ネチネチ叱らない
3. 古いことまで持ち出さない。



禁句5か条

1. 指示・命令・禁止型
「早く早く!何やってんの!」「勉強しなさい」「早く寝ろ」

2. 脅迫・脅し型
「片付けないとオモチャ全部捨てるよ!」「~しないと~してあげない」

3. 尋問・質問型
「どうしていつも忘れ物するの?」「授業中ちゃんと聞いてるの?」

4. 自慢・いやみ型
「お父さん(お母さん)はもっとできた」「憎くて言ってるんじゃないけれど」「たまにはいい点取ってくるんだね」

5. 侮蔑・侮り型
「ドジ、グズ、のろま、馬鹿、オッチョコチョイ」「こんな子生んだ覚えはない」



 こんなことがありました。Y君は中2。小柄ですが、これまで相当な「ワル」をして保護所に来ました。学習中もやる気がないと立ち歩き授業の妨害をします。注意すると「わかったヨ」といったん着席しても、すぐにフラフラと身が入りません。学習の強制はしませんがルールとして“人に迷惑をかけないようにしよう”があります。
 
 このとき、Y君は教室を出て小学校高学年の教室に入り、いたずらをし、とうとう保護所の職員から廊下に連れ出され注意を受けましたが反省する気配もないので<個室行き>になりました。これは面接室のような所に一人で入って、自分のやったことを振り返り反省をしてもらうために時々とる方法です。
 
 どの子も一人ぼっちでいるのを嫌がりますので、それなりの効果があります。ですが、多くの子は自分の「ワル」についての価値判断を持っています。ストレスがたまりイライラしたり不安がおそってきたとき、良くないと分かっていても爆発するのです。こういうときの説教はあまり効き目がありません。子どもたちは<嵐が過ぎるのを待つ>だけです。そればかりか時には<いつもこの人は怒ってばかりいる>という反感さえ持つこともあります。通常は担当の職員が心を込めて話をし反省を促すようにしています。この時は私にやらせてもらいました。
 
 私は主に学習担当ですが、時間をとっては子どもたちの成育歴やこれまで大変だった話などしっかり聞くようにしています。【受容と共感】です。学習場面では♤人間誰しも出来ない子はいない。もちろん怠けている子はいる。♤学習は必ず分かる。ゆっくり、じっくり、粘り強く。の姿勢で望み、怒ることはまずありません。「怒ったら負け」も口ぐせです。在り難いことに多くの子どもが「みわジー」と慕って信頼してくれています。Y君もそうです。
 
 ドアをノックして入室すると、Y君は床に寝そべってふてくされています。入ってきたのが私だったので意外な顔をして「反省すりゃいいんだろう」と。「今日は今までと違うんだ。お前のいいところを10こ書けたら出してもらえるようにするから」「エーッ! 出たいけど、オレいい所なんて1つもないもん」「じゃあ悪いな。ここにいて」と部屋を出ようとすると慌てて「みわジー、教えてよ。オレ何かあんの?」と言うY君をつれなく突き放して部屋を出ていこうとすると「じゃあ、スポーツが得意とか身軽とかもいいの?」「あるじゃん。そんなふうに自分をしっかり見て書きな。」

①スポーツが得意②明るい③やさしいところもある…。9こまでたどり着き、あと1つです。

「エーッ、もうねえよ。教えてよ。オレのいいところ」・・・・・。

 私が彼にどうしても書いて欲しい1つ。それは9こも自分を見つめ直してくれてたということ。自分に自信を持ってもらいたいということです。子どもは良いところをしっかり見てやり、【励まし・ほめる】ほうが、叱って育てるより、よほど素敵だと思いませんか。



 人間が成長するとき、「知・徳・体」が必要だと言われています。「かしこさ・やさしさ・たくましさ」ということでしょう。どの要素も大切だとは思いますが、多少学力が不十分でも、体力的に恵まれてなくても、やさしさだけはすべての子どもに身につけてほしいと思ってきました。

 民話の絵本で多くの名作を残した斎藤隆介氏。『モチモチの木』のあとがきに、切り絵の挿画を担当した切り絵作家・滝平二郎氏のことについて触れ、2人の共通点として以下のように書いています。


 「にんげんやさしささえあれば」という爺さまの言葉を「やさしさだけあればいいのか」なんて見当違いなへりくつをいう種類の人ではないのだ。人間のすばらしい行動の底には、やさしさこそが、金の発動機(モーター)になっていることを、私と同じに信じて疑わぬ人なのだ。


 「やさしさという金の発動機」を、どの子の心の中にも回し続けてほしいと願っています。



(参考文献: 三輪睦雄 『子育てに悩むあなたへ チョッといい話』 ルック)





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