子どもたちの運動能力を育てるには


初瀬基樹
  

 先日は、多くの方に運動会を見に来て頂きましてありがとうございました。

 毎年プログラムと一緒に配布する「からたち保育園にとっての運動会とは」にも書いていることですが、運動会は、「子どもたちの成長した姿、これまで身に付けてきた力を見てもらう場」ですが、「見せるためだけの運動会にならないように」と気を付けてきました。とはいっても、やっぱりお父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんなどお家の方々に見てもらうというのは、子どもたちにとって、とても励みになるようで、運動会が近づくに連れて、子どもたちの「できるようになりたい!」という思いが強くなっていくのを強く実感しました。きっと「いいところを見せたい!」という心理が働くのでしょうね。運動会2日前の4回目のミニ運動会では出来なかったことが運動会当日には難なく出来てしまった子も多くて、いかに子どもたち自身の「やる気」が大切かということを改めて気付かされました。

 運動会が終わった翌週、子どもたちは「あ~やっと運動会終わった」ではなく、「楽しかった~。また運動会したい!」「竹馬もっと上手になりたい」「跳び箱もっと高いの跳べるようになりたい」「おにいちゃん、おねえちゃんたちがやってたのをやってみたい!」とそれぞれに自分なりの目標を持っていろんなことに挑戦し始めているようです。

 運動会をきっかけに、また秋からの運動遊びなどが盛んになっていけばいいなと思います。


 さて、現代の子どもたちの運動能力が、かなり低下していることは、これまでの園だより等でもお知らせしてきた通りですが、実際どれぐらい低下してきていると思いますか?


 山梨大学教育人間科学部教授の中村和彦先生の調査によると、「最近の5歳児の運動能力は25年前の3歳児とほぼ同じ」で、「今の小学校3、4年生の運動能力は25年前の5歳児と同じ」レベルなのだそうです。(からたちの子どもたちはもう少し高いレベルにあると思いますが・・・)

 園での遊びや生活はそれほど変化してきたとは考えられないのですが、この数十年で劇的に変わったのは、「家庭での過ごし方」でしょう。生活が便利になり、掃除、洗濯、布団の上げ下ろしなどの家事の手伝いを子どもたちがしなくなったことや、住環境自体の変化、さらにはテレビ、ビデオ、ゲーム機等の普及で子どもたちが外遊びをしなくなったこと、そして、昔ならなんでもなかったような小さなケガが、現在では「危険なこと」と考えられ、大人たちが子どもたちの活動を制限してしまうようになったことなどが原因と考えられます。

 また、一般的に「子どもの学力」についての関心に比べると、「子どもの運動能力」に対する関心は低いようにも感じます。運動能力を高めるためにスイミングやサッカー教室、野球教室などに通わせているケースもあるようですが、一つのスポーツをやっていれば大丈夫というものでもありません。それぞれのスポーツにはその種目ごとに中心となる動きがあり、それを中心に練習をするからです。その点、鬼ごっこや缶けりなど昔ながらの遊びの中には、走ったり、跳んだり、引っ張ったり、投げたり、蹴ったり、立ち止まったり、急に方向転換したり・・・と実に多様な動きをします。運動能力をバランスよく高めていくには、特定のスポーツよりもこうした鬼ごっこなどの遊びの方が優れていると言えそうです。

 しかも、遊びが盛り上がると楽しくて繰り返し、遊ぶ時間も増えていき、結果的に技術的にも体力的にも向上していくのです。

 また、遊びを通して友だちとの関わり方や力の差のある子がいる場合の対処法など、遊びをおもしろくするためにいろんな工夫もします。


 やっぱり遊びって大切だなあと思います。遊びながら子どもたちはいろんなことを学んでいきます。とことん遊びにのめり込むことで、意欲や自主性、思いやり、今の時代に一番必要な自己肯定感も育っていきます。わが園では以前から遊びを大事に保育してきていますが、今後もさらに「どんな遊びがどんなふうに子どもたちの心や体を育てているのか」を深く見ていきたいなと思っています。





参考: ベネッセ情報誌『これからの幼児教育2011秋』(「のめり込める遊びで幼児の心と体は育つ」)






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