サザエさんは発達障がい?


初瀬基樹
  

 先日、「発達障がい支援コーディネーター養成講座」に参加してきました。


 みなさんも「発達障がい」という言葉を耳にされたことがあるかと思います。

 近年、「発達障がいの子どもたちが増えている」と言われています。実際に増えているのか、それとも、昔からいたけれども診断名が付かなかっただけなのか・・・。ただ、現在の熊本市の状況で言えば、1歳半健診では全体の25.5%(約4人に1人)、3歳児健診においては全体の13.6%(7~8人に1人ぐらい)、5歳児では約10人に1人ぐらいの割合で、何らかの遅れを指摘されているそうです。


 「発達障がい」と診断される場合の特徴的な姿は、「落ち着きがなく多動である」「集中して取り組めない」「集団行動が難しい」「言葉が出ない」「読み、書き、計算の理解など学習面での困難を抱えている」「対人関係がうまく築けない」「人の気持ちがわからない」「忘れ物が多い」「乱暴である」「衝動的に行動してしまう」などですが、これらは多少なら誰にでも当てはまるようなことです。こうした姿が「困り果ててしまうほど」である場合に「発達障がい」と診断されるのだそうです。


 周りからは「保護者の子育ての仕方が悪い」とか、「困った子」などの偏見や誤解を受けやすく、子ども自身も失敗体験の積み重ねによって自信をなくしたり、自己否定してしまうようになり、いじめや不登校、引きこもりなど、社会に適応するのが難しくなっていくケースもあるそうです。


 「発達障がい」は、「育て方」に問題があるわけではなく、生まれつき「脳の働き方」が他の人と異なるために起こります。見たり、聞いたりしたときの「受け止め方」、「感じ方」、「考え方」が他の人と異なるのです。
「脳の問題」なので、治療したら完全に治るという類のものではありません。周りの適切な関わりにより、社会生活で困らずに生活できるように育てていってあげることが必要なのです。「困った子」と見るのではなく、周りがその障がいを正しく理解して「本当に困っているのは子ども本人」なのだという視点で接していく必要があります。


 さて、日本人で知らない人はいないだろうというぐらい有名な『サザエさん』ですが、このサザエさんの始まりの歌で「お魚くわえたドラ猫~追っかけて~はだしで駆けてく~陽気なサザエさん・・・」という歌詞がありますね。研修の中で「こうしたサザエさんの姿は、『特有の性格(個性)』なのか、あるいは『発達障がい』によるものなのか、どちらだと思いますか?」という質問がありました。私を含め参加者は概ね、「サザエさんは障がいではない」と答えたのですが、「そうですね。サザエさんという人柄をみんながよく知っているし、漫画の舞台となった昭和初期のあの頃であれば、周りの人は温かく笑って見ていられるでしょう。しかし、これが、現代の大都会、六本木ヒルズのような場所であったらどうでしょうか?そのような場所で、はだしで猫を追いかけていくようであれば、おそらくサザエさんは、発達障がいを抱えていると診断されることでしょう。」とのこと。

 また、こんな話もありました。「首の長いキリンは広いサバンナでは不自由することなく動きまわることが出来ますが、熱帯雨林で高木が生い茂ったような場所では思うように動けません。同じキリンであるにもかかわらず、場所によっては不自由な身となるのです。」

 このように、それぞれが持つ「特性(特有の性格・個性)」を「活かしやすい環境」もあれば、「活かしにくい環境」もあり、活かしにくい環境では、「環境」と「個性」の間に「障がい」が生じることになります。このように、もとは同じ「個性」であっても、時代や環境、価値観、背景等によっては「障がい」だと診断されることもあるのです。
 
 だからこそ、周りの正しい理解が必要であり、「その子にとって何が障がいになっているのか」、「どんな支援が必要なのか」を見極める必要があります。見極めるというと「まずは診断してもらって」となりがちですが、「診断」は、あくまで、「支援の方法を探す手掛かり」として必要なものであり、「診断」そのものが重要なのではありません。「診断名」よりも「1人ひとりの子に応じた支援」のほうが大事なのです。


 障がいのあるなしにかかわらず、それぞれの個性を尊重しながら、1人ひとりの育ちをしっかり見つめて、どの子にも適切な援助ができるように、今後もがんばっていきたいと思います。








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