劇場ごっこへの取り組み


初瀬基樹
  

 そろそろ「劇場ごっこ」に向けての取り組みが本格化してきました。「劇場ごっこ(行事)に向けての取り組み」という表現はあまり好ましくないのかもしれません。あくまで「日常の保育の延長上に行事を位置づけたい」と考えているからです。ただ、目標があるとそれに向かってみんなで取り組みやすいという面もあるので、どう表現するといいのかなというのは悩むところですが・・・。

 それはさておき、これまでのわが園での劇場ごっこは、「子どもの発想、子どもの表現を大切に」と考えてきました。しかし、昨年度は「子どもの発想や表現は大切にしながらも、もう少し大人も一緒になって、子どもたちと楽しみながら『共に創る』劇にしてみてはどうか」と職員間で話し合い、そのように取り組むようにしました。今年もその方向で進めていくつもりです。


 どの行事においてもそうですが、「見せるためだけの行事にならないように、この取り組みを通して、子どもたちにどんな力を身につけていってほしいのか」を常に考えながら取り組んでいこうと考えています。
 
 たとえば、この「劇場ごっこ」、見せるためだけであれば、どこからか台本を持ってきて、子どもたちにセリフを覚えさせ、あらかじめ決まった踊りを覚えさせ、繰り返し練習させれば、それなりに見栄えのする劇になることでしょう。しかし、そのような取り組みで果たして子どもたちにはどんな力がつくのでしょうか?見に来る人は喜ぶかもしれませんが、実際やっている子どもたちは本当に楽しんでできるのでしょうか?


 わが園での取り組みでは、まずもとになるお話を選ぶところから始まります。子どもたちに伝えたいお話、心で感じたり、考えたりすることのできるお話なのかどうか。実際に子どもたちに読み聞かせをしてみて、子どもたちの反応を見たりしながら、「今年はこのお話で行こう」と決めます。


 昨年の「森は生きている」、今年の「わらしベ王子」と2作品とも長いお話で、少し難しいところもあったりしたので、子ども向けにわかりやすくしたり、短くしたりして、わが園独自の絵本を作りました。それを、クラスに置いて、大人が読み聞かせをしたり、子どもたちが自分で手にとって見ることも出来るようにしています。

 同時に、ちょっとした小道具を用意したり、環境を整えたりして、ごっこ遊びを展開できるようにします。また、場面を想像して想像画を描いてみたり、お話に出てくる歌をみんなで歌ったりもします。


 劇場ごっこが近づき、いよいよ劇として形作っていく際にも、大人が「ここはこうして」と教え込むのではなく、「このとき、どんな気持ちでこんなことを言ったんだろうね?」「そういうときってどんな顔すると思う?」「どんな格好をするとそれらしく見えるんだろうね?」「王様らしい話し方って?」「家来らしい話し方って?」とひとつひとつ丁寧に子どもたちに問いかけ、子どもたちの表現を引き出しながら、場面、場面を深めていきます。踊りの振りつけや、雨、風などの表現も、みんなで思い思いに動いてみて、「いいねえ、その動き、それ取り入れてみよう」といった感じで、動きや振りなども一緒に考えていきます。

 今回のお話のように、沖縄のお話となると「沖縄っぽさはどうやったら出せるのか」とか、お話に出てくる「胡弓」という楽器のことなど、子どもたちがまだ知らないことや、考えてもわからないようなことに関しては、大人が調べたり、考えたりして子どもたちに伝えていきます。

 このようにして、お話の内容を理解し、そのお話の世界を深め、登場人物の気持ちを考えたり、○○らしい動きを考えたり、お話に出てくる時代、地域、背景などへの関心、理解を深め、お話を通して、「悲しみ、怒り、うれしさ、なつかしさ」、「約束」、「優しさ」、「偉いことと威張ること」、「心に響く歌や踊り」「自由」などについても一緒に考えながら、子どもと大人で劇を作っていくのです。

 今年の劇場ごっこは「わらしべ王子」。さて、子どもたちはこのお話をどのように理解し、どのように演じてくれるのでしょうか?今から楽しみです。


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