学力は親子関係で決まる!?


初瀬基樹
  

 
 AERA(2010年4月26日号)に「早期教育効果は小学生で消える 子どもの学力は何で決まるのか」という記事が載っていました。
(インターネットでも下のアドレスで見ることができますので、興味のある方はそちらもご覧下さい。 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100426-00000001-aera-soci )


 その記事によると・・・
 
 文部科学省が少し前に行なった調査で、「親の所得が高いほど子どもの学力も高い」という結果が出ていたそうなのですが、お茶の水女子大学の内田伸子教授(発達心理学)が行なった調査によれば、「子どもの学力格差は親の所得格差ではなく、親子のかかわり方が大きく影響していた」というのです。


 内田教授の調査では、「読み・書き」能力だけをみると、3歳の時点では、親の所得や教育投資額が多いほどポイントが高かったそうなのですが、その差は子どもの年齢が上がるにつれて縮まり、小学校入学前には消滅したそうです。「文字などの早期教育の効果はわずか、数年しか続かない」というのです。さらに、内田教授が20年以上前に実施した調査でも、「3、4歳で文字を習得している子と、習得していない子との差は、小学校入学後に急速に縮まり、1年生の9月には両者の差は消えてしまう」という結果が出ていたそうで、また、別の研究でも、「漢字の習得では、早期教育を受けた子どもと受けなかった子どもとの差は小学校2年生ごろに消滅し、むしろ国語嫌いは早期教育を受けた子に多かった」という結果もあるのだそうです。


 内田教授によれば、「所得が低い家庭であっても、子どもとのふれあいを大事にして、楽しい経験を共有するような『共有型』の養育スタイルの家庭の子どもの語彙得点は高いが、所得が高くても大人の思いを押しつけ、トップダウンで禁止や命令、体罰などを多用する場合は子どもの語彙の成績は低い。他の子どもとの比較や勝ち負けの言葉を多用するとか、子ども中心で親が犠牲となる教育も、学力基盤を育むのに効果はない」のだそうです。


 また文字を習得している幼児と習得していない幼児に、それぞれ空想でお話をつくらせたところ、文字を習得していない子どもの方が想像力豊かな内容だったそうです。


 「幼児期には五感を使って親子で体験を共有することが大切。親子のコミュニケーションや会話のやりとりを通じて、子ども自身が考えて判断し、親子の絆が深まっていく中で子どもの語彙力は豊かになる。お金をかけなくても子どもは伸びる」のだそうです。


 また、お茶の水女子大学の榊原洋一教授も「脳神経学的に胎児期や乳幼児期の早期教育の有効性を正当化する科学的根拠はない」とし、「むしろ、早期教育の弊害として一番心配されるのは、子どものストレス」とおっしゃっておられるそうです。


 実際に「早期教育を受けている幼児は、受けていない幼児に比べてストレスが高く、さらに早期教育を受けている幼児は、昼間の園での活動が鈍くなっていた」というデータもあり、「日中の活動の低下が子どもの発育にとって良いはずはなく、他にも早期教育を受けた子どもがストレスで情緒障害を引き起こしたケースや、親子の愛着関係に悪影響を及ぼした事例も報告されている」のだそうです。


 また、塾や学習教室での先取り学習も逆効果になる危険性があり、「日本には飛び級制度はないし、習熟度別クラスも少ない。塾などで勉強したことを学校で『復習』する状態が常に続くと、学校での勉強がつまらなくなる。こうした子どもたちは、結果として学校の勉強に対するモチベーションが低下し、集中力も低下する。それこそが中学校以降の学力低下につながりかねない。」のだそうです。


 幸い、私たちの園では、早くから「偏った早期教育は何の意味もないし、むしろ弊害の方が多い」ということに気付いていましたので、詰め込み型のお勉強的なことはしてきませんでした。そんなことよりも、「自分のやりたいことを思う存分やった方がいい」、「遊びが一番大事」ということを大事にしてきました。さらに、保育者や友だち同士、もちろん親子のコミュニケーションも大切に考えてきましたので、今回の記事を読んでいて、改めてわが園の保育は間違っていないなと確信することができました。


 卒園した保護者の方々や学校の先生方からも「からたちの子は意欲、好奇心があって、必要な時にはしっかり話を聞けるもんね」、「からたちの子は後伸びするもんね」と言って頂くことがたびたびあり、そのことも自信につながっています。


 今や、保育園、幼稚園でも園児獲得のために早期教育等を目玉にしているところがたくさんありますが、「この時期の子どもたちにとって本当に必要なことって何なのか?」だけは見失わずに、これからもがんばっていきたいと考えています。




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