愛情の足りない時代?


初瀬基樹
  

 先日、あるテレビ番組を見ておりましたら、「最近の若者の恋愛事情」みたいなコーナーがありました。
「実際の彼氏、彼女を作るのは何かと面倒だし、ゲームの世界で疑似恋愛を楽しんでいるから、それで満足」という若者が増加しているのだそうです。「本当にそれで満足なの?」と疑いたくなりますが、「ひきこもり」と呼ばれる人達がすでに100万人を超え、しかも、増加の一途をたどっているなどという背景を考えれば、それも不思議ではないのかなという気もします。

 話が飛躍しすぎるかもしれませんが、私には、こうした最近の様々な問題(犯罪や社会問題も含め)の多くの原因が、現代日本人の「自己肯定感の低さ」、裏を返せば「幼い時の愛情不足」にあるように思えてなりません。

 「自己肯定感」というのは、「自分のことが好き」「自分は大切な人間だ」、「自分には存在価値があり、世の中や他の人にとって必要な人間だ」と感じる気持ちのことです。こういう感情は、幼いときから、親や周りの大人によって、例えどんな子どもであったとしても、それとは関係なく、「あなたのことが大好きよ」という「無条件の愛情」をたっぷりと受けながら育つことによって育まれるものだと思うのです。

 「無条件の愛情」をたっぷり受けて育った子どもは「自分はみんなから愛されている」「生まれてきてよかった」という気持ちを持つことができます。「何かが出来なくても、イタズラしても、その時は怒られるかもしれないけど、お父さんやお母さんは絶対にボクのことを嫌いになったりしない、お父さんもお母さんもボクのことが大好きなはず!」と心の底から思える子どもに育っていれば、その子はその後、どんな場面に遭遇してもきっと乗り越えていけるでしょう。

 反対に、小さなときから親や周りの大人からの「出来る、出来ない」の評価にさらされ、充分な愛情を感じることが出来ないままに育ってしまった子どもは、「これが出来なかったら、お父さんやお母さんに嫌われてしまうかも・・・」と不安で不安で、親の顔色ばかりをうかがう自信の無い子どもになってしまうでしょう。こういう子は小さい時は単なる「消極的な子ども」で済まされるかもしれませんが、いずれ非社会的な行動(ひきこもりなど)や反社会的な行動(非行、暴力行為など)を起こしやすいと言われています。


 乳幼児期の子どもたちには特に、(小学生や中学生になったとしても)「無条件の愛情」をたっぷり注いであげて欲しいと思います。イタズラしようが、ケンカしようが、おもらししようが、おねしょしようが、「おまえのことが大好きだよ!」と何度でも口に出して伝えてあげて下さい。抱っこしたり、おんぶしたり、ちゃんと向き合って会話したり、微笑みかけたりと行為で伝えてください。それが子どもの発達の原動力であり、生きる力、苦難を乗り越える力の源になるはずですから。



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