保育園の最低基準が無くなる?


初瀬基樹
  

 認可保育園には守らなければならない最低の基準というものがあります。これは全国各地どこに行っても同じです。地方によっては最低基準が最高基準みたいになっているところもありますが、あくまで法律で定められた最低基準ですから、通常はこれより上の基準で保育がなされている場合が多いのです。

 ところが、先日、地方分権改革推進委員会というところが第3次勧告というのを出し、その中で、「保育所の最低基準(面積、保育士の数)をそれぞれの地方に任せてはどうか」ということを言い出したのです。

 これは、都市部で保育園の数が足りずに、入園させたくても出来ない家庭が非常に多くて困っている(いわゆる待機児問題)ので、それを何とかしようという動きと、地方分権を進めていこうという動きが重なってのことなのですが、私たちからすると「ちょっと待った!」と言わなくてはいけません。本来なら、待機児問題を解消するには、新たに保育園を作るか、園舎を増改築して定員を増やしていくべきだと思うのですが、それにはお金がかかるから、最低基準を緩和して、今ある保育園にさらに子どもを詰め込もうとしているのです。今現在でも、待機児童問題解消を理由に、ある程度までなら定員を超えて入園させてもよいことになっているのですが、それでもまだ待機児童が減らないので、さらに詰め込むことが出来るように今度は法律を変えようとしているのです。

 確かに東京の都心部などでは、物理的に新しい園を作るのは難しいという面もあるかもしれません。そうした理由から、すでに「認可保育園」より、少し基準を緩和した「認証保育所」というものが存在しています。しかし、そうした限られた地域の問題によって、待機児童どころか、わが園のような定員割れをしているような園なども含め、全国各地すべての保育園にかかわる最低基準そのものが緩和されてしまうなどということが許されていいはずはありません。面積だけでなく、子どもの数に対する保育士の数に関する基準まで緩和されてしまうかもしれないのです。

 ただでさえ、日本の保育園の「子ども1人当たりに必要と定められている面積」や「子どもの数に対する保育士の数」は、諸外国に比べると非常に低い基準(下枠線内参照)にあるのに、これを「地方で決めていい」ということになってしまえば、お金のない地方や、子育てにそれほど力を入れようとしない地方などでは、さらに基準が引き下げられ、子どもたちの保育環境は、ますます劣悪なものになっていってしまうかもしれないのです。


 例えば、3歳以上児の子ども1人に必要とされる面積の基準では、スウェーデンのストックホルムなどでは7.5㎡、フランスのパリでは5.5㎡、アメリカのニューヨークでも3.25㎡といった基準ですが、日本ではたったの1.98㎡です。また、子どもの数に対する保育士の数も、日本では4,5歳児30人に保育士1人という基準ですが、諸外国では、せいぜい13~15人に1人です。(少人数グループに複数担任など)



 
 保育園関係者だけでなく、保護者のみなさんや一般の方々にも関心を持って頂ければと思います。




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