人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ


初瀬基樹
  

 最近、私が読みかけている本のなかから少しご紹介したいと思います。

 言うまでもありませんが、念のため、断っておきますと、本のタイトルと文章をそのまま引用しているので「幼稚園」となっていますが、「保育園より幼稚園が優れている」とか、決してそんな話ではありませんので、誤解のないようにお願いします。「幼稚園」を「保育園」と読み替えて頂ければ幸いです。



 人間、どう生きるか、どのようにふるまい、どんな気持ちで日々をおくればいいか、本当に知っていなくてはならないことを、全部残らず幼稚園で教わった。人生の知恵は大学院という山のてっぺんにあるのではなく、日曜学校の砂場にうまっていたのである。わたしはそこで何を学んだろうか。

 何でもみんなで分け合うこと。
 
 ずるをしないこと。

 人をぶたないこと。

 使ったものはかならずもとのところに戻すこと。

 ちらかしたら自分で後片づけをすること。

 人のものに手を出さないこと。

 誰かを傷つけたら、ごめんなさい、と言うこと。

 食事の前には手を洗うこと。

 トイレに行ったらちゃんと水を流すこと。

 焼きたてのクッキーと冷たいミルクは体にいい。

 釣り合いの取れた生活をすること ― 毎日、少し勉強し、少し考え、少し絵を描き、歌い、踊り、遊び、そして、少し働くこと。

 毎日かならず昼寝をすること。

 おもてに出るときは車に気をつけ、手をつないで、はなればなれにならないようにすること。

 不思議だな、と思う気持ちを大切にすること。発泡スチロールのカップにまいた小さな種のことを忘れないように。種から芽が出て、根が伸びて、草花が育つ。どうしてそんなことが起きるのか、本当のところは誰も知らない。でも、人間だっておんなじだ。

 金魚も、ハムスターも、二十日鼠も、発泡スチロールのカップにまいた小さな種さえも、いつかは死ぬ。人間も死から逃れることはできない。

 ディックとジェーンを主人公にした子供の本で最初に覚えた言葉を思い出そう。何よりも大切な意味をもつ言葉。「見てごらん」


 人間として知っていなくてはならないことはすべて、このなかに何らかの形で触れてある。ここには、人にしてほしいと思うことは自分もまた人にたいしてそのようにしなさいというマタイ伝の教え、いわゆる「黄金律」の精神や、愛する心や、衛生の基本が述べられている。エコロジー、政治、それに、平等な社会や健全な生活についての考察もある。

 このなかから、どれなりと項目を一つ取り出して、知識の進んだ大人向けの言葉に置き換えてみるといい。そして、それを家庭生活や、それぞれの仕事、国の行政、さらには世間一般に当てはめてみれば、きっとそのまま通用する。明快で、揺るぎない。わたしたちみんなが、そう、世界中の人々が、三時のおやつにクッキーを食べてミルクを飲み、ふかふかの毛布にくるまって昼寝ができたら、世の中どんなに暮しやすいことだろう。あるいはまた、各国の政府が使ったものはかならずもとのところに戻し、ちらかしたら自分で片づけをすることを基本政策に掲げて、これをきちんと実行したら世界はどんなに良くなるだろう。
 
 それに、人間はいくつになっても、やはり、おもてに出たら手をつなぎ合って、はなればなれにならないようにするのが一番だ。


 ロバート・フルガム(著)・池 央耿(訳)『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』河出書房新社より




 私が付け加えることは何もありません。ここに書かれていること、まさにその通り!と思いませんか?
 
 1日ただ遊んで過ごしているように見えても、子どもたちは本当にさまざまなことを園生活で学んでいるんですよね。そのことを私たち大人は改めて自覚し、子どもたちには、人としての基本をしっかり身につけていってほしいものです。



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