「自分のことが大好き」と言える子どもに


初瀬基樹
  

 新年度が始まって1ヶ月。新入園の子どもたちも少しずつ保育園での生活に慣れてきたようで、だいぶん笑顔が見られるようになってきました。これまでずっとおうちで大好きなお母さんと一緒だったわけですから、突然、お母さんと別れて、知らない場所、知らない人たちに囲まれて過ごさなければならないということは、子どもにとって相当不安なはずです。あまりに不安が大きいとガチガチに固まって感情を表すことさえできないこともあります。ですから、「大きな声で泣ける」ということは、それだけ自分の気持ち、思いを外に表すことが出来ているということなので、かえって安心します。「保育園より、お母さんがよかったもんね。悲しいときはいっぱい泣いていいんだよ。」と、できるだけ子どもの気持ちに寄り添ってあげたいと思います。子どもの気持ちに保育者が共感してあげることで、子どもと保育者の信頼関係も築かれていきますし、気持ちが落ち着いてくれば少しずつ周りにも目が向くようになり、「あの子たちあんなことやってる」「楽しそう、私もやってみたいな」と楽しいことを見つけることもできるようになっていきます。きっともうすぐ、みんなこのからたち保育園が大好きになってくれると思います。また、そうなってもらえるように職員一同がんばります。

 さて、先日、アシュリー・ヘギさんが亡くなったというニュースが報じられていました。度々、テレビで特集されていたのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。(5月2日(土)の夜にも特番があるようです。)

 アシュリー・ヘギさんというのは、「プロジェリア」という難病の少女です。プロジェリアとは、遺伝子の異常によって通常の10倍近いスピードで年老いていくという病気で、800万人に1人、世界でも30人程度しかいないといわれる難病です。平均寿命は13歳とも言われていますが、アシュリーさんは17歳で、プロジェリア患者としては最高齢だったそうです。

 アシュリーさんは生前、たくさんの心に残る言葉を残しています。いくつかご紹介しますと・・・、

「プロジェリアじゃなければいいのに、なんて思わないわ。わたしは、わたしという人間であることが幸せだもの」

「わたしのことをかわいそうだって言う人がいるわ。でも、その人たちはわたしじゃない。だから、そう言うんだと思う。だってわたし、自分のこと、かわいそうだって、ちっとも思わないもの。」

「プロジェリアという病気をどう思っているかは、昔と変わってないわ。わたしがプロジェリアだということには、ちゃんとした理由があるの。神様が与えてくれたものだから、すてきなことなのよ。だから、わたしは大丈夫」

「人はこうなのに自分はこうだとか、誰かと自分を比べてどうこう考えたりしない。誰だって完璧じゃないもの。」

「わたしは、人の前で悲しい顔はしたくない。笑顔でいると、みんながハッピーになるでしょ。」

「わたしがわたしらしくいることで、人を勇気づけることができているなら、それは、とってもステキなことだと思うわ。」

 などなど・・・。
 そして、死を覚悟した後も「生まれ変わったらもう一度自分に生まれ変わりたい」とも言っていました。


 アシュリーさんは、どうしてこんなに強く生きることができたのでしょうか。

 すべてを受け入れ、自分のことだけでなく、他人のことまで考えられる。

 きつく苦しかったはずなのに、今度生まれ変わるとしてもまた自分を選ぶとまで言えるなんて。

 わかりきったことですが、「幸せかどうか」は、他人が決めることじゃなくて本人が決めることなんですよね。私などは、ついつい、「どうして自分ばっかり・・・」と卑屈になったりしますが、アシュリーさんの生き方を見ると、そんな自分が恥ずかしくなります。
 

 私たちが子どもを育てていく上で、何を一番大切にしなきゃいけないかといったら、このアシュリーさんのように、どんな境遇であっても、いろいろな弱さを持っていたとしても、「自分のことが心から好き」でいられること、「この世に生まれてきて良かった」、「自分は生きていく値打ちのある人間なんだ」と自信を持って生きていくことができるような子どもに育てることなんじゃないでしょうか。




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