「昔ながらの遊び」を見直そう


初瀬基樹
  

 「昔ながらの遊び」を思い付くままに述べてみますと、「鬼ごっこ」や「缶けり」、「かくれんぼ」などの鬼遊びや、「だるまさんがころんだ」、「花いちもんめ」、「あぶくたった」などのわらべ唄遊び、その他にも、道具(遊具)を使って遊ぶもの、竹馬やけん玉、コマ、かるた、すごろく、はねつき、あやとり、ビー玉、おはじき、ゴムとび、凧あげ、福笑い、将棋、メンコ・・・などなど、実にたくさんの遊びがあります。みなさんも子どもの頃、一度は夢中になったものがあるのではないでしょうか?

 最近は、テレビ、ビデオ、ゲーム、パソコンなどが子どもの遊びの中心となってしまい、地域や家庭でこれらの昔ながらの遊びを経験する機会は激減してしまいました。
 
 これからの時代、そうした最新メディアを避け続けていくことは不可能に近いので、ある程度は仕方ないとして付き合っていくことも必要なのかもしれませんが、やはり、昔から伝承されてきた遊びには、今どきの遊びにない素晴らしい魅力がたくさんあります。今の遊びと、昔の遊びを共存させながら、たくさんの昔ながらの遊びを後世にも伝えていきたいものです。


<昔ながらの遊びの魅力>

・多種多様な遊びがあり、多少ルールを変更すれば、いつでも、どこでも、誰とでも、何人でも遊べるものがたくさんある。

・基本は比較的シンプルな遊びが多いので、とっつきやすく、それでいて飽きることなく、遊びを高度なものへと発展させることができる。(上には上が・・・)

・手先(足)など、体を使う、頭で考える。体のさまざまな感覚を磨くことができる。

・友達とうまくつきあっていく術を自然に学んでいく。

・道具(遊具)がいるにしても、一般的に低価格である。

                       などなど・・・


<コマまわし>

 保育園では、伝承遊びとして、コマ、けん玉、すごろく、かるた、3並べ、だるま落とし、竹馬などを出していますが、なかでも今は、コマが大人気です。コマまわしは、コツさえ覚えてしまえば簡単なのですが、実際コマがまわせるようになるためには相当苦労するものです。

 九州では、一般に「コマ」というと洋梨(卵?)型のコマを連想すると思います。この肥後ゴマは、まわして遊ぶことももちろんしますが、基本的には「相手のコマにぶつけて、弾き飛ばしたり、相手のコマを割ったりして、勝ち負けを競う」といったことが遊びの中心になる、いわゆる「けんかゴマ」です。これはこれで大変おもしろいので、ぜひ後世にも残していきたい遊びだと思っています。

 コマにもいろんな種類があり、地方によって遊び方もいろいろです。園では「肥後ゴマ」も使ったりしますが、「自分でひもをまいてまわす」ことに重点を置き、「いろんなまわし方、いろんなワザを修得しながら、手指を巧みに使いこなせるようになって欲しい」と願い、一般的なコマ(漢字の「中」に似た形をしていて、ひもを巻いてまわすもので、幼児にも扱いやすいプリントコマや、木のコマなど)で主に遊んでいます。おうちでコマまわしをされるなら、ぜひ、おとうさんやおじいちゃんたちに教えてもらって、昔ながらの肥後ゴマ(けんかゴマ)も伝承していきたいですね。


 さて、コマがまわせるようになるための第一の関門は、なんと言っても「ひも巻き」です。ひもを大人が巻いてやってまわすだけなら、3歳ぐらいでも結構できます。しかし、自分でひもを巻いて・・・となると4歳でもなかなか難しく、5歳ぐらいでようやくできるようになります。もちろん個人差はありますが・・・。

 親指と人差し指を中心にしっかりひもを持ち、表側の芯棒に巻きつけます。芯棒に近い部分は、指先に力を加え、やや引っ張りかげんに強く巻き、徐々に力を抜きながら、順序良く巻きます。また、コマを持っているほうの手も、ひも巻きの状態にあわせて、コマの裏全体がみえるような、手首の回転が必要となってきます。4歳では、この辺の「力の抜き加減」が難しいようです。

 このように、片方の手では、コマをしっかり握っておき、片方の手でひもを巻いていくという、右手と左手がバラバラな働きをしていきながら、それでいて、コマをまわすためには、両方の働きが一つに統一されていかなくてはならないのです。


 第二の関門は、「投げ方」です。コマの「まき方向」と「投げ方向」とがあっていないと、「どんなに格好良く投げてもまわりません。」コマを投げる寸前まで、コマとひもに力をこめて、手首を使って、一瞬のうちにパッと投げなければなりません。

 また、大きいコマ、重いコマになるほど、投げると同時に少しひもを引き加減にしないといけないなど、投げるのにもコツがあるのです。


 ここまでできるようになると、今度は友達同士でどっちが長く回せるかとか、小さな枠を作って、うまく枠の中へ入れてまわせるかどうかとか、股の下からまわしてみたり、ジャンプしながらまわしてみたりなど、いろんな姿勢でまわしてみたり、まわっているコマをもう一度すくって手のひらの上でまわしたり、綱渡りや連続技など、いろんなコマの「技」への挑戦もできるようになっていきます。それらをマスターするにはさらにひたすら練習しなくてはなりませんが・・・。


 こうした過程で、子どもたちは誰でも一度は「友達はできるようになったのに自分はできない」という悔しさを味わうことになります。これもとても大事な体験だと思います。「悔しさ」をバネにがんばるのです。繰り返し、繰り返し練習して、なんでうまくできないんだろう、どうやったらいいんだろうと悩み、友達や上手な人がやるのをじっと見て、技を盗むなどして、ひたすら練習し、やっとの思いで出来るようになった時の喜び、うれしさ、そういう経験をたくさん積んで欲しいなと思うのです。遊びながら、意欲、集中力、忍耐、努力など精神面も鍛えられ、問題解決能力や洞察力なども養っているのです。大げさに聞こえるかもしれませんが、来る日も来る日もコマに取り組む子どもたちを見ていると、本当にそうだと思います。

 また、コマに限りませんが、遊びを通して、数を数えたり、体のバランス感覚や物理学的な要素、化学的な要素を体験することもあるでしょう。もちろん、そんなこと意識しているわけではありませんが、一生懸命遊ぶことで、おまけとしていろんな力が備わっていくものなのです。


 しかも、こうした伝承遊びに使う道具(遊具)は、一般的に低価格です。多少壊れても自分で修理ができたり、より上を目指して改造したりもできます。高いものが良いものとは限らず、道具をいかにうまく使いこなすか、どんな技ができるか、いかに勝負に勝てるかが重要なポイントです。この辺も最近のゲーム類とは大きく違う点でしょう。


 「手は突き出た大脳」なんていう言葉もありますが、手足を使うことは脳の刺激にもなります。

 なにより、友達との楽しいひとときをつくることが、心の形成、人格形成に大きな役割を持っていると思うのです。


  ぜひ、おうちのかたも昔の遊びを思い出し、子どもと一緒に遊んでみませんか?




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