育ち合う


初瀬基樹  

 
 今年の夏もあっという間に駆け抜けていきました。子どもの頃、夏といえばのんびりできるときでしたが、保育園で働くようになってからは、のんびり出来るときは皆無に等しく、夏もとにかく忙しい。7月、園児の「宿泊保育」に始まり、「からたちフェスティバル」、その間に同時進行で「保育所指導監査」があり、8月に入って、「たんぽぽキャンプ(毎年、夏にわが園が主催する小学生以上を対象とした2泊3日のキャンプ)」、お盆にちょっと一息、妻の実家へ里帰り、帰って早々、IPAくまもと主催の「おもしろ村準備、おもしろ村」、そしてあっという間に9月、「運動会」へと続いていく・・・。どれも準備が大変で、本番はあっという間に終わってしまうのだけど、終わってみるとても充実感、達成感があって、「あ〜楽しかった」と思える。だから毎年続けられるのかなと思います。今年もそんな夏を過ごしながら、考えたことをいくつか・・・。

「いつから自分は大人になったのか?」

 私も今年の6月で40歳になってしまいました。自分が子どもの頃、20歳30歳ですら、ものすごく大人に見え、40歳といえば、かなりの「おっさん」でした。しかし、実際に自分が40歳になってみると、体力の衰えや、疲れがなかなか取れないとか、新陳代謝が悪くなり、食べた分だけ腹周りが太っていく・・・など、体の変化については実感しますが、中身は昔と何ら変わっていないように感じるのです。(傍から見れば、まぎれもない「おっさん」なのでしょうが)子どもの時と中身が変わったという実感がないのです。みなさんはいかがですか?まわりから大人として見られるようになってはいるけど、いつから自分は大人になったのかな?と考えることはありませんか? 

「子どもにパワーをもらう」

  今年もわが園主催の「たんぽぽキャンプ」やIPAくまもと主催の「おもしろ村」などで、たくさんの若者との出会いがありました。ともに汗を流し、ともに達成感を味わい、子どもたちのためにという同じ思いを共有する「仲間」として過ごしていたのですが、冷静に考えれば、彼らは私が成人になる頃に生まれてきたのです。つまり、私は20歳前後の彼らの2倍も生きているのです。それに気づいたときはとても不思議な感覚でした。

 その彼らは、将来、看護師や保育士、幼稚園教諭を目指す学生たちなのですが、これまであまり自分より小さな子どもたちと深く接する経験もなく育ってきたということでした。しかし、若いだけあって精一杯体を動かして子どもたちと一緒になって遊んでくれました。後では「大変だった、疲れた、子どもって本当に疲れ知らずですよね。」などと言いながらも、みんな満足げないい顔をして、「でも、すごく楽しかったです。子どもにパワーをもらいました。また来年も参加したいです。」という感想を残してくれていました。たんぽぽキャンプのボランティアに来てくれた看護師を目指している男子学生の一人は「保育士の資格も取りたい」と言い出すほどでした。
 
 「子どもからパワーをもらいながら仕事ができる」子どもにかかわる仕事ができることは、なんと幸せなのでしょうか。

 夏に学童保育で来ていた子どもたちも口々に、「あ〜また、たんぽぽキャンプ行きてえ〜。早く来年にならんかな〜」「超楽しかったよね〜」「また○○と△△に会いたいなあ(ボランティアで参加してくれたスタッフ)」と言っていました。こんな言葉は本当にエネルギーになります。

「上を目指すばかりでなく・・・」
 
 昔は、地域で子どもの群れがあり、お兄ちゃんお姉ちゃんに遊んでもらい、遊びを通していろんなことを学び、だんだん大きくなって今度は下の子の面倒を見て、大人へと成長していきました。しかし、今の日本の社会では、そうした地域での子どもの群れはほとんど皆無に等しくなり、学校の勉強だけで「早く大人になれ」と言われているようなものです。先を目指すばかりで、後ろを振り返ることがないのです。

 我が家にも、娘が二人います。上の子は、長女なのでそれなりにしっかりしていて、責任感も強い方だなと以前から感じていたのですが、下の子は末っ子ということもあり、甘えん坊だなと思っていました。ところが、昨年末、その下の子がどうしても犬を飼いたいと言い出し、犬を飼い始めたのですが、犬の面倒を見るようになってみるみるお姉ちゃんらしく成長してきました。さらに、たんぽぽキャンプから帰ると、片付けなどを言われる前に自分からし始めて、妻を驚かせました。また、お盆には家族で妻の実家へ行き、子どもたちだけ1週間ほど長く滞在してきたのですが、その間、妻の妹の子どもの面倒をよく見ていて、あの子があんなに面倒を見るなんて・・・と驚くほどでした。(後半は本人も少々疲れていたようですが)「おねえちゃん!おねえちゃん!」と慕われることが、年上である責任感と自覚を促すのでしょう、そして、自分が人に必要とされていると感じることができ、人に慕われることのうれしさ、満足感を得て、さらに年長者として振る舞わなければと成長を促すのかもしれません。
 
 「かわいい子には旅をさせろ」といいますが、やはり、わずかな期間でも親元を離れ、自分で考えて、自分で行動しなければならない体験をすることで、自立心もめばえるのでしょう。わが娘ながら、大きな成長を感じた夏でした。

 保育園でも、異年齢児混合保育に移行してからというもの、年長さんの成長ぶりが目覚ましいなと感じています。しかも、小さい時に甘えん坊で手を焼いた子ほど年長児になったときに下の子の面倒をよく見るようになっているように感じます。自分の気持ちをわかってもらえた分だけ、人の気持ちもわかるようになるのでしょう。

 やはり、人は人とのかかわりを通して成長するものだと実感しています。子どもだけでなく、子どもにかかわる大人もまた成長していくことができるのです。これからも「お互いが育ちあう場」としての保育園であり続けたいし、在園児だけでなく、たんぽぽキャンプやおもしろ村などを通して、いろんな子どもたちとのかかわりを持ち続けながら、子どもを真ん中に老若男女問わずいろんな方々にもかかわってもらって、お互いに育ち合っていけたらなあと思います。

 とりとめのない話になってしまいました。



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