だいすき!絵本
初瀬 恵美
『どろんこどろちゃん』
作・絵:いとう ひろし
出版社:ポプラ社
私は今年度の目標の一つに、お昼寝の時間を利用して「毎月、きらきらの子どもたち一人ひとりに一冊は絵本を読んであげよう」という目標をたてました。子どもたちが物語の絵本をあまり読まなくなっているような気がしたからです。(お昼寝のときは、子どもたちが、自分で自分の好きな絵本を1冊選んでお布団へ持っていき、読んでもらっています。)
4月の初め、そえかちゃんに声をかけると「そえかは、ひとりでねるけんよか!」と、返事が返ってきました。その日は隣のりょうがくんと一緒に絵本を楽しみました。すると、そえかちゃんは、一生懸命絵本を覗き込んできました。「あ、寝かされるのは嫌だけど、絵本を読んでもらうのは、以前と変わらず好きなんだな」と思いました。4月半ばになっても、なかなかそえかちゃんと絵本を読む機会がありませんでした。そんな時、お昼ご飯を自由に食べる日がありました。その日がチャンスだと思い、そえかちゃんと一緒に昼食を食べました。できるだけ、昼食中いろいろな会話をして、ご飯が終わるころ「今日、そえかちゃんと一緒に絵本が見たいな。いい?」と尋ねると「そえかは、一人で寝れる。」とまた返事が返ってきました。そこで「うん。そうだね。一人で寝れるもんね。だから、寝る前に一緒に絵本だけ見たいな〜。」というと「いいよ。でも(背中を)トントンせんでね。」と笑って言ってくれました。
その、そえかちゃんが選んだのが、今月の絵本『どろんこどろちゃん』です。どろんこが大好きな子ども達に人気の絵本です。どろんこから出てきた「どろちゃん」。作り方は「土をコップに5はい 水をコップに2はい よく かきまぜて、よく こねて。はい、できあがり。」「かたすぎると ぽろぽろ。」「やわらかすぎると べちゃべちゃ。」など、優しく科学的なことも書いてあります。どろちゃんの遊びはダイナミックで、泥んこ遊びを経験したことのある子ども達は絵本を見るだけで笑顔になります。しかし、泥遊びの経験が少ないお子さんは「だめね。汚いね。」という子もいます。家の近くには泥遊びの経験をさせてあげられる場所がなかったり、衛生面や泥で汚れた服を洗うのが大変だったりするので「泥んこ=汚い」と思われている保護者の方のお気持ちもわかります。(洗濯は本当に大変なので、保育園では「どろんこパンツ」というのを一枚用意して頂いています。入園時にもご説明させて頂いていますが、泥んこが苦手な方も、よろしくお願いします!)
保護者のなかには困る方もいる(?)泥んこ遊び。しかし保育園では大切にしたい遊びです。絵本とは離れてしまいますが「なぜ泥んこ遊びがいいのか」お伝えしたいと思います。それは、@皮膚感覚への刺激を通して、たくましい自律神経を育てることができたりA失敗しても何回もやり直しがきく、可塑性が高い素材だったりB子ども同士のコミュニケーションを生み出しやすい素材だから・・・等々といい点は沢山あります。遊んだ経験のある方はお分かりと思いますが何より、ベタベタ感が気持ち良かったり、土の香りに癒されたり、五感で感じる気持ちよさがあります。心が解放されます。そこからいろいろ学ぶことができる優れた遊びということを知って頂きたいと思います。九州大谷短期大学名誉教授の山田真理子さんは著書『子ども・こころ・育ち 機微を生きる』の中で「人間が何千万年も体験してきた、泥土を素足で歩くような体験が、急速に失われているということは、本来の人間性へと育つ筋道が歪められたり、閉ざされたり、足りなかったりしているとうことなのです。」と書かれています。泥んこ遊びは当然裸足でします。そもそも真冬でないかぎり、裸足で遊ぶ子が多い保育園ですが、保育園では敢えてその自然環境を用意し、子どもたちにも経験してもらっているということをご理解ください。
この絵本では、子どもたちが大好きな泥んこが「どろちゃん」となり、絵本になって登場します。子どもたちにとっては、すごく身近で大切な絵本のようです。この絵本を、そえかちゃんは、何度も「もう一回(読んで)」とおねだりしました。絵本の中の言葉を食べるように、私の言う事を真似して一緒に楽しみました。そして、満足して眠りました。
この絵本は泥んこシーズン到来の、この時期に楽しく読めるおすすめの一冊です!絵本と共に、たまにはお子さんと泥んこ遊びをしてみてはいかがでしょうか。
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