だいすき!絵本

初瀬 恵美




『としょかんライオン』
作:ミシェル・ヌードセン
絵:ケビン・ホークス
出版社:岩崎書店




 
 今年度も早いもので、残り1カ月となりました。毎年3月の「からたちだより」には、卒園する子どもたちに、伝えたい一冊を選んで紹介しています。今月は海外秀作絵本にも選ばれた『としょかんライオン』を紹介します。
 
 ある日、図書館にライオンがやってきました。図書館員のマクビーさんは、大慌てで、館長に知らせに行きました。しかし、館長のメリウェザーさんは「決まりを守ること」ができるなら、ライオンが図書館にいることを許可します。ライオンは図書館が大好きなようで、ちゃんと決まりを守ったり、図書館のお仕事を手伝ったり、子どもたちにも大人気になりました。しかし、それを妬ましく思っていたのが、マクビーさんでした。自分の仕事がとられてしまったような感じがしていたのです。ある日、メリウェザーさんが仕事中に高いところから転倒してしまいました。メリウェザーさんは、マクビーさんを呼んでくるようにライオンに頼みました。しかし、ライオンは、人間の言葉がわかっても、人間の言葉を話すことはできません。必死に思いを伝えようとした結果、大きな声でほえてしまったのです。図書館には「静かにしなければいけない」という決まりがあります。そのことをよく分かっていたライオンは図書館を去りました。一方ライオンのことをよく思っていない上、大声でほえられたマクビーさんは館長にライオンが大きな声をだしたことを告げ口に行きます。しかし、そこで見つけたのは、転倒し、骨折した館長でした。館長は「たまには、ちゃんとしたわけがあって、きまりをまもれないことだって あるんです。」と伝えました。ライオンがいなくなって図書館は火が消えたように静かになりました。子どもたちも館長も元気がありません。そんな姿をみて、マクビーさんは、ライオンを探しにでかけました。雨の中、ずいぶん探しまわりました。そして、やっと見つけて、館長の言葉を伝えました。「たまには ちゃんとしたわけがあって、決まりを守れないことがある。」と。ライオンは次の日からまた図書館へ通うことができるようになりました。

 
 私は、この絵本を読むたびに心があたたかくなります。保育園を卒園すると、「決まり」が多い世界へと旅立つ子ども達。決まりを守ることは、もちろん大切なのです。しかし、「ちゃんとしたわけがあって守れない」ことも、人生においては出てくるものです。その幅の広さを子どもに教えてあげる事も、私たち大人の大切な役目だと思いました。

 この絵本の作家ミシェル氏は、絵本の初めに亡くなった司書の方の思い出に捧げる「あなたはいつも新しい友達を受け入れる心をもった人でした。」と記しています。その一文から、絵本への思いや、あえてライオンを主人公にした作者の思いが伝わってきました。「決まり」と対比してある「寛容さ」が、心にしみわたる絵本です。そのメッセージをより伝えてくれているのが、パステル調で描かれた絵です。とても優しく描かれてます。ライオンや子どもたち、大人の表情の豊かさもこの絵本に暖かみを加えています。ぜひ、お子さんと一緒に読んでみてください。






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