だいすき!絵本

初瀬 恵美




『ふきのとう』
作:甲斐信枝
監修:森田竜義
出版社:福音館書店



 
 みなさんは「ふきのとう」をご存知ですか?私はふきのとうのみそ焼きが大好きです。小さいころは、雪がとけはじめて、少し春の気配を感じられる頃になると、毎年ふきのとうを採りに行っていました。採りに行くと言っても、家の隣の畑だったり、日当たりのよい土手だったり、すぐ近くです。必ず毎年同じ場所に顔をだしていました。そんな懐かしい思い出とともに、今月は『ふきのとう』の絵本をご紹介します。

 この絵本は子どもをとりまく自然や社会のさまざまな事柄を題材としている福音館書店の月刊科学絵本「かがくのとも」から生まれた絵本です。ふだんは、生活の一部になっていることにも焦点をあてて、子どもたちにやさしく科学的なことを伝えてくれるシリーズの絵本です。(例えば1969年、世界で初めて創刊された月刊科学絵本はかこさとしさんの『はははのはなし』です)ところで、私が今月この絵本を選んだ理由は二つあります。まず一つ目は季節的なことです。二つ目は、最近目にすることがなくなった「ふきのとう」を子どもたちに伝えていきたいという思いからです。

 この絵本は、雪の間から枯草がのぞいている里山風の景色を背景に、お話しが始まっています。「でてこい でてこい ふきのとう・・・略・・・おひさまが はるだと よんでるよ」「ふきのとう、でてるかな」と始まっています。そしてページをめくると「みつけた ゆきをおしのけて、とんがりあたまを のぞかせている・・略・・」と続きます。まさに、小さい頃、ふきのとうを見つけに行った、あの頃の気持や情景と重なっていてびっくりしました。(熊本はなかなか雪が降らないので、「ゆきをおしのけて」という情景は重ならないかもしれませんね。)

 このような出だしに、心をつかまれた私ですが、さらに読んで驚きました。全く知らなかったこと、気にも留めてなかったことが描かれていたのです。

 それは、ふきには、オス、メスがあること。黄色い花を咲かすのがオス、白い花を咲かせるのがメス。そして、別々の地下茎をもつこと。オスは花が終わるとすぐに花は枯れ、メスは種を育てる仕事を始めること。つまり、種と地下茎の両方で仲間を作ることが分かりやすく描かれていたのです。毎年同じ場所に出るという習性は地下茎だろうと、大きくなって予想はしていました。しかし、オス、メスがあったなんて・・・!!驚きでした。絵本から教えてもらいました。

 今でも春まだ早いこの季節になると、小さかったあの頃を思い出します。私が好きになった理由は、両親が「ふきのとう」を好きだったからです。採って帰ると喜んでくれて、夕飯のおかずの一品として出てきました。つくしやせりなどもそうです。家族の喜びが自分の喜びにもなり「にがいけど、おいしい」早春の味覚になったのです。また採りに行った体験は、いろいろな感覚も伴っていたので、絵本の絵をみるだけで感覚までもよみがえってくるのです。いい絵本とは感覚の記憶までも呼び覚ますものだなと思いました。そして、その体験を今の子どもたちにも味わわせてあげたいと同時に、みなさんにもお伝えしたくて、この絵本を今月は選びました。もしどこかで、ふきのとうを見つけたら、ぜひ教えてください。


 








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