だいすき!絵本

初瀬 恵美




『いいものもらった』
作:森山 京
絵:村上 勉
出版社:小峰書店





 子どもの頃に比べて、秋が短くなったと感じていたここ数年ですが、今年はゆっくりと秋が深まっていくのを感じることができています。子どもたちは、外で思い切り遊んだり、お散歩へ出かけたり、気候のいいこの季節を楽しんでいます。

 深まりゆく秋を感じながら、少しタイムスリップしたようなまったりとした絵本を楽しんでもらいたくて今月は『いいものもらった』を選びました。

 主人公は子だぬきです。表紙には、たぬきのおばあちゃんが囲炉裏を囲んできのこ汁を作っている絵が描かれています。その周りで、暖をとる子だぬきや、陽気に踊る子たぬきの姿もあり、これだけで、心が和むような温かい絵になっています。

 物語は、たぬきのおばあちゃんが、遠くに住む孫たちに会いに行くところから始まります。お土産をもっていこうと思ったのですが、しばらく孫に会っていなかったので、孫の数を忘れてしまいました。そこで、とりあえず10個お土産を持っていくことにしました。でも、実際孫の数は11匹、一つお土産が足りませんでした。すると、お土産をもらえなかった孫のたぬきは、お土産をつつんできた「ふろしき」をちょうだい!と言ったのでした。

 風呂敷をもらった子だぬきは、喜んで林へでかけていきました。そして、冬支度をしている動物たちに会うと、お手伝いをして歩きます。帰りには、風呂敷いっぱいのキノコをとるのですが、重すぎて動けなくなってしまいます。そんな子だぬきを心配して、家族みんなが迎えに来てくれました。そして、家に帰ってから、みんなで、お腹いっぱいのキノコ汁を食べたというお話です。

 一枚の大きな風呂敷が「はちまき」や「ほおかぶり」「きのこを包むもの」「雨よけ」などになり、子だぬきが「いいものもらった」と喜ぶ姿はとても微笑ましいものがあります。

 現代の絵本ではなかなか主人公にならなくなったたぬきに焦点をあてている絵本です。 とても素朴な中に、深まりゆく秋の景色も描かれていて、この時期を楽しむのにちょうどよい絵本だと思います。どうぞ、お手に取られて、ほっこりした気分を味わってみてください。

 







河内からたち保育園のホームページへ