だいすき!絵本

初瀬 恵美




『となりの花さかじじい』
作・絵:馬場のぼる
出版社:こぐま社




  先日幼児クラスに新しい絵本をおろしたときのことです。一緒に遊んでいた女の子3人と読み始めようとすると、元気よく走りまわっていた男の子も「ぼくもみるー。」と3人やってきました。あわせて6人になりました。子どもたちはソファーに座り、私はその正面に座り読むことにしました。とはいっても、お膝の上が好きな女の子、いつも元気な男の子、たった6人とはいえ、この6人が最後までちゃんと、お話し楽しめるのかな・・と少々不安を抱きながら読み始めました。
 
 まずは、題を読んでから「花咲かじいさん、って知ってる?」と聞くと、「知ってる!」といっちゃんが言いました。「あのね、おじいさんが、なんか、ぱぁーってまくと、はながさくと。」そして、えいこうくんが「とのさまが、それをみらすと。」と説明してくれました。他の子はいっちゃんとえいこうくんに注目して、話をききました。「そうそう、灰をまくと、枯れ木に花が咲く話。これは、その枯れ木に花を咲かせたおじいさんの、隣に住んでいたおじいさんの話だよ。」と言うと、「えー!」と、みんな目をぎょっとさせました。そして、読み始めるとその集中力の凄いこと、凄いこと!初めて出会う絵本に対する子どもの集中力を久しぶりに感じました。
 
 この絵本は、『11ぴきのねこ』シリーズでおなじみの馬場のぼるさんの絵本です。ユーモアたっぷりで、お笑いも満載なので、ゲラゲラ笑いながら、子どもたちと見るのを思い浮かべていたのですが、実際は違いました。

 例えば、予想外のストーリー展開。昔話といえば、おばあさんは川で洗濯をします。しかし、洗濯に出かけたおばあさんは、洗濯をせず昼寝をします。(隣りのおばあさんで、いわゆる意地悪ばあさん的なばあさんです)一方川下で洗濯をしているおばあさんは、ももを拾います。(いわゆる良いおばあさんです)持って帰って、ももから生まれたのはなんと「犬」でした。子どもたちは「ももたろう!」と思っているのに、「えー!」「あれ?」が多いのです。このような予想外の展開と、ゆるい絵との調和に、本来ここで「どっと笑う」と思っていたのですが、ほとんど笑いません。子どもたちは「ん?」と思いながら「どうなるんだろう?」「どんな話なんだろう?」という好奇心をふくらませ、次の展開を期待している眼差しをして絵本を見つめていました。こんな体験は初めてで、とても印象的でした。絵本の最後の方に隣りの花咲かじいさんは「ごほうび もらえたと おもいますか?」という問いかけがあります。子どもたちは「もらえなーい」「意地悪ばっかりしとったもん」と答えました。そして、次のページをめくり、あるのは・・・どんな場面だと思いますか?このページは絵だけで、文字がありません。でも、その絵がまた予想外で、最後はどっと笑ってしまいました。ため込んでいた笑いを吐き出すかのように。

 読み終えて、男の子たちは、ふだんは元気いっぱいで、本と言えば、虫(図鑑)の本を見ることが多かったけど、実は絵本が好きだったことを思い出しました。また、男の子たちが集中していたからこそ、抱っこ好きの女の子も、ソファーを離れることなく、座り続け、見ていられたのかな、と思いました。子どもたちと絵本をみると新しい発見があって、本当に楽しいな、おもしろいなと思いました。








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