だいすき!絵本

初瀬 恵美




『せかい いち おおきな うち』
作・絵:レオ=レオニ
出版社:好学社




 みなさんは、日本の童謡の代表作「かたつむり」をご存知ですよね。「でーんでん むしむし かたつむり♪」という歌です。とてもなれ親しみ長年愛されてきた童謡の一つだと思います。私が小さな頃は、雨上がりになると、塀やあじさいの葉っぱに沢山いたのを思い出します。しかし昨年のお泊り保育で阿蘇へ行ったときに、かたつむりを見つけた職員が「あ、かたつむりだ!今の子どもたちって、かたつむりを見たことない子が多いんですよ。」と言うので、すごく驚きました。確かに私たちの子どもだった頃と今では、自然環境が大きく変化して、当たり前にいた身近な生き物が、姿を消し始めています。絵本や童謡に出てくる身近に思える生き物も、身近でなくなっていたり・・・。阿蘇で見つけたかたつむりは、その職員が保育園に持ち帰り、幼児クラスで育てています。冬には殻に膜をはって、冬眠していました。冬眠するかたつむりを始めて見て、飼育するおもしろさを改めて感じました。やがてかたつむりとの生活が一年になろうとする、からたち保育園のこどもたちにとっては、少しは身近に感じる「かたつむり」の絵本を今月は紹介します。
 
 作者は、『スイミー』でおなじみのレオ=レオニ。驚くことに『スイミー』『フレデリック』『せかいいち おおきな うち』は、同時期に谷川俊太郎さんによって訳されています。『スイミー』は小学校1年生の教科書に長年掲載され、多くの方がご存知かと思います。その一方で、今月紹介する『せかいいち おおきな うち』は、ご存知の方は少ないのではないでしょうか。副題として「りこうになった かたつむりの おはなし」と書かれています。
 
 内容は、ある日、ちびかたつむりが、お父さんに「ぼく おとなになったら、せかいいち おおきな うちが ほしいな。」と話し、お父さんが「うどの たいぼく」といって、「せかいいち おおきな うち」を手に入れたちびかたつむりの話をしてくれるのです。ちなみに「うどのたいぼく」とは、「体ばかり大きくて立派だけれど、何の役にも立たない者」のこと。その通り、世界一大きなうちを手に入れたかたつむりは、結局うちが重すぎて、移動できず、食べものにたどりつけず、最後を迎えます。ちょっとシリアスな場面もありますが、教訓が入った、このお話。ちびかたつむりは、その話をきいて、大人になったら、好きな所へ行けるように、うちは、小さくしとこうと思ったのでした。やがて、大人になったちびかたつむりは、好きなところへ出かけることができ、幸せに暮らしました。また、「どうしてきみのうちはそんなに ちいさいの?」ときかたつむりに〈せかいいち おおきな うち〉のはなしをきかせるのでした。というお話しです。
 
 優しく、カラフルな色使い、左上からライトが当たっているような光沢と陰影がある絵は、とても素晴らしく、かたつむりの世界のファンタジーが感じられる絵本です。谷川俊太郎さんは、訳するとき、原本のもつ視覚的な美しさを損なわぬことを、まず第一に心がけたそうです。そのために、文章のレイアウトをできるだけ原本通りにしたそうです。翻訳する方のこのような、細やかな気遣いがあったからこそ、海外の絵本が40年以上も前から今までずっと親しまれてきているのですね。
 
 長年、ベストセラーでありつづけるレオ=レオニさんの絵本、「おしらせボード」のところに置いておきますので、ぜひお時間のある時に手に取ってご覧ください。







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