だいすき!絵本

初瀬 恵美




『おにぎり』
作:平山英三
絵:平山和子
出版社:福音館書店






  今年は沢山の方が入園してくださり、にぎやかな4月を迎えています。我が家の長女も今年の春から高校生になり、お弁当と格闘する日々がやってきました。早起きして、お弁当を作るのが大変だな〜と思いながらも「おいしかったよ。ありがとう。」と欠かさず言ってくれる感謝の気持ちは嬉しいものです。

 
 さて、今月はそんな私の中の「おべんとう」つながりで、『おにぎり』の絵本を選んでみました。この絵本は、語るよりも、手にとっていただくのが一番!というような絵本です。表紙は白をベースとし、そこに、三角の海苔巻きおにぎりが描かれています。そして、ピンク色の文字で「おにぎり」と題字が書かれています。とてもシンプルなものです。しかし、このシンプルさがおにぎりの魅力を引き立たせていて、表紙を見るだけで心も胃袋も(?)掴まれる絵本だと思います。お米が主食の日本人ならではの、ごちそうの「おにぎり」。だからこそ、乳児からおそらくご年配の方までも幅広くとりこにしてしまうのではないかなと思います。ちなみに、裏表紙も白をベースとした表紙の真ん中に「うめぼし」が描かれています。思わず、口の中に唾液が広がるほどリアルな梅干しの絵です。
 
 絵本自体は、とてもシンプルです。炊きあがったごはんをにぎって、おにぎり弁当をつくるお話。しかし、そこに描かれている炊きたてのごはん、おにぎりをにぎる優しい手、一粒ひとつぶのお米が立っている、おいしそうな出来たてのおにぎり、そのおにぎりを包んだ海苔のつややかさと適度なしっとり感は、見事です。とくに、炊きたてのご飯から、たちのぼる白い湯気は、思わず「ふー、ふー」としたくなるくらい、リアルです。お腹がいっぱいのときにみても「おいしそう〜」「たべたい〜」と思ってしまうくらい、愛情が込められたおにぎりが描かれています。
 

 ところで、この『おにぎり』という絵本、見ると虜になること間違いなし!と太鼓判を押せるほどなのですが、園長が「よく、おにぎりを題材にしようと思ったよね。」とつぶやきました。言われてみれば「なるほど、本当だね。」と会話しました。その疑問を解決してくれる文章が『母の友』のブログに載っていました。
 
 平山和子さんの夫の英三さんが当時”子ども技術史”という発想で考えていた絵本の一つだそうです。子どもが生きていくために獲得していく技術、身近に見る技術とは何だろうと、二人でよく話し、”手を使う”ことを表現したいと思って生まれた絵本だそうです。
 
 そのことを知ると見る視点も変わってきます。「おいしそう」だけじゃなく、子どもたちに伝えたい「おにぎりをにぎる、手の動き」に注目!ですね。そういえばこの絵本を見た子どもで、「手に水をつける」場面の絵を見て「手を洗っている」といった子がいました。まだ3歳だったので、経験の中から導き出された答えの「手を洗う」に「なるほど!」と感心させられましたが「手にご飯粒がくっつきにくくするために、手に水をつけてるんだよ」とも伝えました。「絵本」「実際の動きを見る」「実際にやってみる」どれが、最初にきてもいいのですが「子ども技術史」という深い思いをもって生まれたこの絵本、ぜひ「おにぎり」作りのきっかけにしてみてはいかがでしょうか?







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