だいすき!絵本

初瀬 恵美




『ぞうのエルマー』
作・絵:デビット・マッキー
出版社:BL出版





  今年度も残すところあと1カ月となりました。年長さんは、いよいよ卒園です。卒園前に、ぜひ出会ってほしい絵本として、3月は『ぞうのエルマー』を紹介します。

 この『ぞうのエルマー』は、年長児さんが作った「大凧」のもとになった絵です。ご覧になられた保護者の方も多いと思います。ご覧になられた方は、とてもカラフルなぞうだったと思いませんか?

 エルマーは、パッチワークのように、いろいろな色をしているぞうなのです。(「からたちだより」で配布している絵は白黒なので、とても分かりづらいのが残念です。)エルマーは沢山のゾウたちと住んでいました。他のゾウたちは、みんな普通のゾウ色をしています。エルマーは楽しいことが大好き!ふざけることも大好きで、他のゾウたちもエルマーがいるとついついふざけてしまいます。エルマーがニコニコ笑えば、みんなもつられて、ニコニコ笑ってしまう程、みんなのモチベーションをあげる中心となる存在でした。しかし、ある夜、エルマーは、一人だけ色が違うことを悩み始めました。みんなと違っているから、笑われるのかなと落ち込んでしまいます。そして、早起きして、「ゾウ色」をした木の実を探しにでかけます。見つけると、全身にぬって、みんなと同じゾウ色にしました。そして、みんなのもとへ帰っていきました。みんなと同じゾウ色になったエルマーを、誰もエルマーだとは気が付きません。ただ静かに立っているだけです。エルマーは、みんなのまじめな顔を見ていたら、おかしくなって「ブオオオー!」と大声を出し、笑ってしまいました。すると、みんなはゾウ色をしているにもかかわらず、「エルマーだ!」「きっと、エルマーだ!」と大笑いしました。とても笑って楽しい日となったので、その日を「記念日にしよう」とあるゾウが提案し「エルマーの日」になりました。その日は、みんな体をいろんな色でかざり、エルマーだけはゾウの色になると決めました。最後はカラフルなゾウの中に一匹だけゾウ色をしたエルマーの挿絵がついています。

 この絵本を3月に選んだ大きな理由は、三つあります。一つめは、「外見」ではなく「中身」が大切だということ。二つ目は「自分」と「仲間」を大切に思ってほしいこと。最後は、ユーモアの大切さを感じてほしいことです。

 エルマーはすごく変わった色のゾウですが、他のゾウは外見が違うからといって、仲間外れにはしませんでした。むしろエルマーといると楽しくて仕方がなかったのです。やっぱり、「外見」より「中身」ですよね。保育園時代ってまさに、この時期で、一人ひとりの持つ良さを分かりながら、「自分」と「仲間」の関係ができていく時期でもあると思います。でも、人生の中で自分のコンプレックスがすごく気になって、何とかならないか試行錯誤する時期ってありますよね。そのコンプレックスは、「仲間」から見れば何でもないことと、受け入れてもらっている実感の体験もまた大切なのかなと思いました。ユーモアは常に持ち続けていてほしいなと思い、この素晴らしい絵本を紹介させていただきました。楽しく読めて、少し奥深い、心に残る良い絵本だと思います。








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