だいすき!絵本

初瀬 恵美




『りゅうのめのなみだ』
作:浜田 広介
絵:いわさき ちひろ
出版社:偕成社



 新年あけまして おめでとうございます

 今年の干支は「たつ」ですね。私は「たつ=タツノオトシゴ」だと思っていましたが「たつ=辰(竜・龍)」なのですね。十二支の中で唯一、実存しない伝説上の生き物だということに、初めて気が付きました。ちなみに、「タツノオトシゴ」はその形があまりにも魚らしくなく、顔立ちが竜に似ていることから辰年の干支の絵柄としても使われることが多いそうです。

 さて、保育園からの年賀状は届きましたか?毎年干支にちなんだ絵本を園長が選び載せています。今年は『りゅうのめのなみだ』を載せました。テレビで放映されていた『日本昔ばなし』の始まりを思い起こさせるようなこの絵、龍の上に少年が乗っています。(『日本昔ばなし』は『たつのこたろう』がモデルのようです)背景は朱色、龍は白と紅白に近い表紙でとてもお正月から縁起の良い表紙です(^^)ストーリーも、心が温まるとても良いものです。

 あらすじを紹介します。南の方に一つの国がありました。その国の山のどこかに、大きな、怖い竜が隠れていると、語り継がれていました。皆が恐れる中、1人だけ怖がらない男の子がいました。だから皆から「不思議な子」と言われていました。むしろ、その男の子は「どうして誰もあの竜をかわいがってやらないの」と同情します。そして、1人で竜を探しに行きます。歩き続け、やっと男の子は竜に会うことができました。男の子は、竜に会っても怖がりません。一方今まで人間から一度も優しい声をかけてもらったことがなく、嫌われ続け、憎まれ続けてきた竜は、最初戸惑います。しかし、男の子の優しさにふれ、今まで人間に抱いてきた憎しみや恨みを捨てようと決意します。その思いが涙となって溢れ出ました。やがて、その涙は川になりました。男の子は竜の背中に乗せてもらい、家へ帰ります。川の水面に竜の体が船のように浮かび上がりました。それを見て竜は「なんと嬉しい。こんな嬉しいことはない。私は、このまま船になろう。船になって優しい子どもを沢山、沢山乗せてやろう。そうやって、この世の中を新しい世の中にしてやろう。」と決意し、黒い立派な船になり、男の子を乗せて町へ帰ったというお話です。


 作者の浜田さんは「まことの愛には、その裏付けに勇気があるということを、この作は意味していましょう。それと、また、清純な子どもの愛から、世の中の子どものためになろうという、大きな竜のギセイの愛が生まれました。一つの善意が、次の善意をうんでいくアカシ(証し)をこの作は語っているともいえましょう。」とあとがきに書かれていらっしゃいます。この言葉が全てを語っていると思います。この絵本は今から86年も前に原文が書かれ、46年前に絵本として出版されました。だからこそ、今ではほとんど使わない「おまえさん」「〜なさる」といった言葉が絵本の中にでてきます。これが苦手という方いらっしゃるかもしれませんが、私は響きが優しく、大好きです。作者も絵を描かれた方ももうお亡くなりになられていますが、お二人の伝えたい気持ちが、文に、絵に、いっぱい詰まった素敵な絵本だと思います。新しい年のスタートに先人が残してくださった素晴らしい絵本と出会ってみませんか?








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