だいすき!絵本

初瀬 恵美




『こんにちは あかちゃん』
作:メム フォックス
絵:スティーブ ジェンキンス
訳:角野 栄子
出版社:福音館書店




 先日、絵本の研修会へ行っていきました。そこで、絵本が子どもの成長にとって、とても大切な「心の栄養」になることを再確認してきました。私たち大人は、絵本を「活字」として読んでしまうので、しばらく経つとその内容を忘れてしまうけれど、子どもたちは「耳で聞き、目で絵を見ている」ので、とても記憶に残るそうです。そして、ぜひ伝えてほしいこととして、「耳から入った言葉は、一生忘れないよ。宝物になるよ。」ということでした。それは、読んでくれた人の語り口調として、記憶に残るのだそうです。絵本を読んであげることってその子の「心に宝物を残すこと」にもつながっていると思うと嬉しくなりますよね。 


 今月は『こんにちは あかちゃん』を紹介します。この絵本にかけてある帯には「あかちゃんのかわいい表情や一生懸命なしぐさは、ぞうさんだったり、おさるさんだったり、いろいろな動物の特徴と重なってきます。動物の生態にも触れながら、あなたとあかちゃんとの掛け合い遊びを楽しめる絵本です。」と書かれています。つまり、絵を見ながら自由に、あかちゃん(子どもさん)と、話しを楽しんでよいお話しなのです。

 絵本を読むとき、皆さんは多分、自然と、赤ちゃん(子どもさん)が「何がいいたいのかな?」と表情や片言の言葉、仕草などを見て、意図を読み取ろうとしていると思います。これがとても大切なことだそうです。赤ちゃんのうちから「意」を汲んでもらう経験の積み重ねにより「相手を思いやる言葉が育つ」ともおっしゃられていました。これは、絵本に限らず、日常生活の中で、「お腹がすいたね。」「オムツがぬれたね。」「抱っこしてほしいの?」など、多くのことを「意」を汲みとりながら、言葉がけしているのも同じです。

 また、この絵本に限らないのですが、あかちゃん絵本を選ぶときに、何を基準に選ぶといいのかというお話しも聞きました。まず、大事にしたいことは「赤ちゃんだからと言って、絵がいい加減なものでないこと。小さい子ほど何も言えないので、丁寧に描かれた絵本を選ぶこと」が大切といわれてました。そして「丁寧に描かれた絵は、絵を見るだけで、お話がでてきます。」ともいわれてました。この絵本はまさに、絵を見るだけで、いろいろなお話が展開できるような、素敵な絵です。質感の違う紙を張り合わせて、いきいきとした動物が描かれています。また背景が白色なので、動物がより際立ち浮き立って見えます。その分、動物が認識しやすくなっています。赤ちゃんのうちから、親しむ絵本として、おすすめの一冊です。
 

 今月は、研修に行ってきた影響で『こんにちは あかちゃん』の絵本の紹介と言うよりも、絵本の良さについて、かなり語ってしまいましたが、一人でも多くの方に、絵本と親しんでいただいて、子どもたちの中にも、そして、読んだ大人の方々の心の中にもたくさんの宝物が生まれるきっかけになれば、それ以上嬉しいことはありません。特に、子どもが成長すると、大人には「だだこね」や「いたずら」としか思えない行動も増えてきます。子どもには必ず「意図」するところがあっても、しつけや、忙しさなどいろいろな理由から、なかなか子どもの思いを汲みとりにくくなってきます。そんなときこそ、絵本を読む時間を一日の間に数分とって、ゆったりした気持ちで読んであげてみてはいかがでしょうか。絵本を通してなら、素直に意図を汲み取ることもできます。それができれば、親子で、楽しい時間が共有でき、子どもさんの心の中にも宝物を残すことができるのです。むしろ気付いた時には、自分(読んだ人)の心の中にも宝が残っていると思います。親子で絵本を楽しめるのは、ほんの少しの間だけです。ぜひ、大切な時間をつくってみてはいかがでしょうか。






河内からたち保育園のホームページへ