だいすき!絵本

初瀬 恵美




『せつぶんだ まめまきだ』
作:桜井 信夫 
絵:赤坂 三好
出版社:教育画劇


 日本にはお正月、節分、ひな祭り、子どもの日等‥四季折々、色々な行事があります。「それは、いつですか?」「どんなことをしますか?」と聞かれても、たいていの人は答えることができると思います。しかし、「その由来を教えてください」といわれると、不確かだったりしますよね。聞いたことはあるけれど、なんだっけ?というように・・。そこで、今月は、行事由来の絵本から『せつぶんだ まめまきだ』を紹介します。


 絵本の舞台は昔の日本です。初めて「豆まき」を取り入れた、ある家族の節分の一日の様子が描かれています。


 節分の日にまずしたことは、囲炉裏で鰯を焼くことです。そうすることにより、家中けむりと、くさい匂いでいっぱいになり、鬼が逃げてゆくというのです。次に鰯の頭とヒイラギの枝と一緒にして、戸口にさすこと。せっかく出て行った鬼がまた家の中に入ってこないように、臭い鰯と、とげとげのヒイラギの葉っぱを一緒にさして戸口に飾っておいたのです。最後に、大豆を炒って食べました。豆には悪魔を払いのける不思議な力があると信じられているのです。

 そこへ、近所のじいさまが、近隣のお父さんたちを呼び集めて、都で「豆まき」が流行っているから、この村でも、豆まきをしたらどうだろうかと相談しにきました。そして、その夜はじめて、豆まきをすることになったというお話です。どんどん、豆まきも広がり、今につながっているということです。


 「豆まき」は、最初からされているものじゃなかったんですね。調べてみると、現在のように炒った豆をまくようになったのは室町時代のことで、江戸時代に庶民に広がったそうです。

 この絵本を読むと、昔にタイムスリップしたような気持ちになります。囲炉裏や土間のある家。電気もガスもなく、医療も発達していない時代。また今のようにテレビやインターネットで得られる情報もない中で、家内安全、無病息災を望む気持ち・・・は日々の願いであり、季節の年中行事として取り込まれるのも必然的なものであることがよく分かります。

 この絵本の中でお父さんが、鬼が悪さをして「子どもが病気になりませんように」「大雨で洪水になりませんように」「家や林がやけたりしませんように」とお祈りをするところがあります。

 また、お母さんが炒った豆を子どもにたべさせるとき「これを食べて、今年も元気でいられるようにね。自分の年の数ともう一つ数えてたべましょう。」と子どもたちに話す場面があります。こうして、親が子どもと共に、願い祈りながら、行うことを受け継いでいくということって大事ですよね。


 ちなみに、最近流行りの「恵方巻」。節分の夜に、恵方(その年、おめでたいとされる方角)に向かって願いごとをしながら、太巻き寿司を一本丸ごと無言で丸かぶりして食べると、いい年になるといわれています。巻寿司は「福を巻きこむ」の意味があり、切らないのは「縁を切らない」、寿司の具は七福神にちなんで七種類とされます。(今年の恵方は南南東!)

 江戸時代末期に起源を発するといいますが、一時期廃れていました。しかし、2000年代において年々高まりを見せているそうです。この裏には、スーパー、コンビニの販売促進活動があるようです。ミツカンが行った恵方巻の認知度調査では、全国平均は2002年(平成14年)時点で53%だったものが、2006年(平成18年)には92.5%にまで上昇したそうです。岐阜から嫁いだ私は、九州に来た時期と販売活動が盛んになる時期がほとんど同時期だったので、これは九州の慣わしだと、勘違いしていました。

 「恵方巻」は、余談になってしまいましたが、今度新しく行事由来の絵本ができるときは『せつぶんだ まめまきだ えほうまきだ』なんてタイトルのものができるかもしれませんね(笑)。昔の人の生活を知りながら、行事の由来を考えるきっかけになる、行事絵本、ぜひ読まれてみてはいかがでしょうか。






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