だいすき!絵本
初瀬 恵美
『もりのおくで おやすみなさい』
作:キャロル・レクサ・シェファー
絵:ヴァネッサ・キャバン
出版社:徳間書店
今年は、凄い猛暑でしたね。9月になっても、まだまだ暑さが続くようですが、せめて、熱帯夜からは解放されたいですね。少しは涼しい夜が来ることを期待しながら、眠る前におすすめの絵本を今月は紹介したいと思います。
『もりのおくでおやすみなさい』というこの絵本は、ワシントン州文学賞を受賞したことがある絵本です。まず、絵本を開くと、見開きいっぱいに、広大な森のおだやかな夕暮れが描かれています。
そして、本文に入ると広大な森の中に、くまの家族登場します。お母さん熊が「さあ、そろそろ ねましょうね。」というと、こどもたちは「もっとあそびたいよー!」と言って、遊びまわります。
続いて、はりねずみのお母さんが「さあ、そろそろ ねましょうね。」というと、子どもたちは「ぼくたち、おなかがぺこぺこなんだ。」といって、ごちそうを探し回ります。
その次は、うさぎのお母さん、その次は、かえるのお母さんが子どもたちに同じように「さあ、そろそろ ねましょうね。」といいますが、子どもたちは全く寝ようとしません。
そこへ、ふくろうのおばあさんがやってきて優しくお話をしてくれます。そのお話を聞きながら、子どもたちは眠りについていきます。
最後のページの見開きには、森を明るく照らすきれいな満月が描かれています。
この絵本の、一番の魅力は、絵の表現力のすごさだと思います。タイトルにもある「もりのおく」という言葉を絵本の最初と最後の見開きを通して表現していたり、動物たちの表情や仕草が人間の子どもたちに共通する可愛らしさがあるところです。そして、お母さんが子どもたちを見つめるまなざしは、とても優しくあたたかみがあります。
絵本の中ではお母さんが「さあ、そろそろ ねましょうね。」と声をかけますが、子どもたちはまだ寝たくないので色々な言い訳をお母さんに言って、寝ようとしない繰り返しがでてきます。これって、どこの親子でも同じなんだなと感じることができます。きっと、ふだんの生活でもよくあることですよね。
感心なのは、そんなやりとりのときでも、お母さんの顔は怒っていないし、子どもの顔もふてくされていません。子どもたちのほどんどが、お母さんのほうをみているし、おかあさんも子どもたちのほうを見ています。中には1匹違う行動をしている子もいますが、ご愛嬌といった感じです。広い森でのおおらかな子育ても伝わってくるようです。
とても温かみがあり、素敵な絵本です。ぜひ、寝る前の一冊として読んでみてください。
|