だいすき!絵本

初瀬 恵美



『新版 かぶとむし
    かぶとむしの一生』
文・絵:得田 之久
出版社:福音館書店



 今月は『新版 かぶとむし かぶとむしの一生』の絵本を紹介したいと思います。この絵本は得田之久氏の昆虫シリーズ5冊組の中の一冊です。40年ほど前に書かれていたものを、現代の子どもたちにより分かりやすいようにと手を入れ、挿絵も何点か描き起こし、新版が作られました。今年の6月に発行されたばかりの絵本です。

 保育園では今年の冬、ゆうし君のおうちから、まるまるとふとった幼虫をもらいました。幼虫をもらったときは、子どもたちと「さてこれは、何の幼虫だろう?」と話し合いました。子どもたちは「口にきばがあるから、クワガタ!」「大きいからカブトムシ」「でも、もしかしてこがねむしかも・・・」と予想しました。実際、私も口にきばみたいなものがあるから、クワガタムシだろうと思い込んでいました。しかし、調べてみてびっくり、ほとんどがカブトムシの幼虫ということが分かりました。簡単な見分け方はカブトムシの頭は黒色、クワガタムシの頭はオレンジ色ということも知りました。

 その幼虫は5月に何匹かさなぎになりました。そして6月やっと一匹目が土の上へと上がってきました。「ヤッター!!」と喜んだのもつかの間、羽化不全で角が曲がり、羽がしわしわで一日で死んでしまったのです。そして、それから数日後2匹目が上がってきました。それをみた子どもたちは「ヤッター!!こんどはちゃんと角がある。羽もきれいだ!」と飛び上がって喜びました。私も羽化不全のカブトムシを見てから、残りのカブトムシは無事に羽化できますように、ちゃんと成虫になれますように・・・と祈るような気持ちで毎日を過ごしていたので凄く嬉しかったです。

 現在、保育園のカブトムシは小分けにして小さな虫かごで飼っています。しかし、絵本のカブトムシは本来の大自然の中での姿が描かれています。私は、空を飛ぶカブトムシの絵をみて「あー、保育園のカブトムシも空を飛ばせてあげたいな。」という思いも出てきました。その反面、つがいで育てて、新たな命の誕生の喜びも経験させてあげたいな、とも思いました。カブトムシの一生は、ほぼ一年です(卵から成虫になって死ぬまで)。今は成虫に育った喜びでいっぱいですが、8月頃には命がつきてしまいます。そのことを絵本から読み取るのは難しいと思いますが、命がつきたカブトムシを見たときに、きっと絵本の内容をもっと理解できるようになるのだろうなと思います。無事成虫になった喜びを感じることができたからこそ、死の悲しみを感じられる経験ができるのだと思います。絵本だけでは感じることのできない貴重な経験です。この絵本はまだ、子どもたちには見せていません。カブトムシの死の前後を通して、子どもたちはどんなふうに「カブトムシの一生」を感じてくれるのでしょうか。

 また、今年度の保育の重点目標の一つとして「調べる・比べる・整理する」ということを掲げています。本物と絵本、図鑑などを見比べながら、今までと違ったカブトムシとの触れ合いが子どもたちとできるといいなと思い幼虫から育てています。職員も子どもたちもカブトムシから多くのことを学ぶことができるとてもいい一冊だと思いました。




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