だいすき!絵本
初瀬 恵美
『そらはさくらいろ』
作・絵:村上康成
出版社:ひかりのくに
ご入園・ご進級おめでとうございます
今年はさくらの季節が長かったですね。毎朝通勤途中の桜並木に癒されていました。
私が小学生だった頃は、桜の名所で毎年、写生大会が開かれていました。友達と自転車で、30分ほどかけて山麓へ行き、写生しながら、のんびり過ごす春の一日が大好きでした。しっとりした山肌、薄紅色の桜々、その木々をながめながら食べたお弁当の味、小川のせせらぎや鳥の鳴き声をききながら話した、たわいもない会話、春の山の香りは、なぜか少ししょっぱかったり・・・桜を見るだけで、いろいろな五感の記憶がよみがえってくるのが不思議です。みなさんは、「さくら」にどんな思い出がありますか?今年は、お花見をしましたか?
この絵本の中でも桜は満開。主人公の女の子は、寝転びながら空を見上げます。すると、風に舞う花びらの上に広がる空の大きさに気づきました。空を見上げている女の子に犬やちょう、かえる、へびが「なにしてるの?」とたずねに来ます。「そらをみてるの。」と答える女の子。動物たちも一緒に寝転がり、空を見上げました。寝転びながら、舞う桜の花びらをみていると「みんな みんな さくらいろ」という気分になってきました。すると「空さん」が「いいな いいな、ぼくもいっしょにねころがりたいそら。」といいます。寝転がることができなくてかわいそうな「空さん」。でも、風が上空に向かって桜の花びら吹上げます。そして空一面に舞いあがった花びらで「そらさんも さくらいろ。」になるというお話です。
単純でかわいらしいお話です。そして、寝転んだときに見える青空、そこに舞う淡いピンクの花びらがとてもきれいに描かれています。本を閉じると青空に1枚の桜の花びらが描かれています。これもまた、とても印象に残る素敵な絵です。
この絵本をみていると、ゆったり、桜をながめたくなります。寝転んで空を見上げたくなります。何かと慌ただしい毎日ですが、こんな時間が大切なんだなと思います。そして、ぜひ、子どもたちにもこんなゆったりした経験や空の大きさを感じる体験をたくさんしてほしいと思います。なぜなら、それは大切な記憶の宝物になると思うからです。
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