だいすき!絵本

初瀬 恵美



『おおきくなるっていうことは』
文:中川ひろたか
絵:村上康成
出版社:童心社


  今年度も残り1カ月となりました。年長さんもいよいよ保育園から巣立ってゆく時期になりました。無事にここまで、大きく育ってくれたことに感謝しながら、今月は『大きくなるっていうことは』という絵本を紹介します。

 この絵本は、園行事でもよく紹介しているので、ご存じの方も多いかもしれません。そういう方は懐かしさをかみしめながら読んで頂けたらと思います。

 この絵本は、保育園か幼稚園が舞台となっていています。園児と園長先生が主人公になっているお話です。絵本の中では、子どもたちが一人づつ順番に「おおきくなるっていうことは」「ようふくがちいさくなるってこと」とか「あたらしいはがはえてくること」など、「おおきくなる」っていうことがどんなことかを楽しく紹介してゆきます。どれもこれも身近に共感できることばかりです。
 


 その中でも「なんでもかんでも たべたりしないってこと」という言葉は、子どもたちの心をひきつけます。挿絵には、電話をかじろうとしている子が描かれています。「電話たべようとしよらす・・・(笑)」と子どもたちは大爆笑。そこで、「みんなも、赤ちゃんのころは、何でも口にアップンとかガジガジっていれとったんだけん(笑)」というと「えへへへ・・・。」とまた笑うのです。だいたいどの子もおうちの人からそういう話は聞いていて、心当たりがあったり、テレかくしで笑っていたりするのです。聞いたことのない子も保育園や、近所の小さい子を思い浮かべてああ、そういえばあの子も何でも口にいれてる・・!とひらめいて、結びついて笑ってしまうのでしょう。

 
 こんな楽しいやりとりをしながら、最後は園長先生から、子どもたちに向けてメッセージがおくられます。
 

 おおきくなるっていうことは じぶんよりもちいさなひとが おおくなるってこと

 おおきくなるっていうことは ちいさなひとに やさしくなれるってこと

 おおきくなるっていうことは そういうこと

 またひとつ おおきくなった おめでとう みんな



 そんな言葉でしめられています。

 園長先生が話している時、挿絵に「にゅうえんおめでとう」と書いてあるページがあります。ここだけ見ると一見入園式を意識した絵本なのかなと早合点しそうになるのですが、そうではありません。これまでのページで「大きくなるっていうことは ○○ってこと」と言っていた子どもたちの入園式のときの絵なのです。一冊の絵本の中にさりげなく「入園の時」と「今」を描き、子どもの成長を感じさせてくれる、そこがとても気に入っています。巣立ち行く年長さんと重ね合わせたり、もう巣立ったけれど、この絵本が好きだった沢山の子どもたちも思い出しました。本当に「またひとつ おおきくなった おめでとう みんな」という気持ちでいっぱいです。





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