だいすき!絵本

初瀬 恵美






『斉藤公子の保育絵本
森は生きている
   12月(つき)のものがたり』
作:マルシャーク
絵:エリョミーナ
曲:林 光
出版社:青木書店




  新年 明けまして おめでとうございます 
  今年もよろしく お願いします
 

 今年も年末年始は、実家の岐阜で過ごしました。天気は大荒れで大晦日から3日間雪が降り続きました。特に大晦日の夜は吹雪でした。その中、除夜の鐘をつきに行き、初詣をしてきました。神社では、私が子どもの頃と変わらず、たき火を燃やし参拝客をもてなしてくれていました。吹雪の中、遠くにこのたき火が見えると今までになくありがたみを感じました。この夜ほど、『森は生きている』の絵本を実感したことはない夜でした。ということで、新年一冊目は、『森は生きている』を紹介したいと思います。

 このお話の原文は、ソビエトの児童文学者マルシャークにより、かかれました。もともとはスロバキアの民話だったそうです。そのお話を、今から約25年ほど前に、保育園の園長先生もなさったことのある保育界では有名な、斉藤公子さんという方が「日本の幼い子どもにわかりやすいように」と実践に即し、楽譜も挿入して出版されたのが、この絵本です。出版にあたり、新たに、ロシア語原作から訳文をおこしてもらったそうです。

 絵本の中に、楽譜と歌詞が書かれている珍しい絵本です。(すでに、子どもたちも何曲か覚えて、遊びながら歌っています)

 あらすじを紹介しましょう。大晦日に、わがままな女王の命令で春に咲く花「マツユキソウ」をお城に届けるように、とおふれがでます。「マツユキソウ」をもってきたものには、ほうびがでるということで、まま母が、まま娘に採りに行かせました。外は、ひどい吹雪です。凍える森の中で、まま娘は、たき火を囲む12ヶ月を司る12の月の兄弟たちに出会いました。兄弟達は、娘に同情し、一瞬だけ森を春にして「マツユキソウ」を咲かせてくれました。その花を持ち帰ると、まま母は、あね娘と、お城へ届けに行きます。女王は、自分で花を見たくなり案内を命じます。そして、冬の森へと行くのですが・・・。

 この絵本に登場するまま娘は、心の優しく働き者の明るい娘です。12人の月兄弟達は、普段の森での娘の働きを良く見ていました。だからこそ、娘に春や、幸せをもたらしてくれます。12人の月以外でも、娘の助けになったり、いい助言をするのが、老兵士です。私の好きな箇所ベスト3には、全てこの老兵士が関わっているので、紹介します。

 一つ目は老兵士が言う、大晦日は「古い年が終わって、新しい年が始まる日」で、「その日には、どんなことだっておこるんだ、よく気をつけて見ていればな」という言葉。大晦日という日にマジックをかける言葉です。こんな気持ちで、ドキドキしながら過ごすことを忘れていました。ものが豊かになったからか、大人になったからか・・・だからこそ、心に響くいい言葉だと思います。
 
 二つ目は、まま母にひどい扱いをされている娘に「一生しんぼうがつづくわけじゃない。」と励ますところです。前向きな気分にさせてくれる励まし方です。
 
 三つ目は、わがままだった女王に本当のお願いの仕方をさりげなく伝えるところです。
 
 どれも、子どもたちに伝えたいことばかりです。ファンタジーの世界と、心に残る言葉がちりばめられているからこそ大好きな箇所です!

 
 園では、12月からこの絵本を担任が読み聞かせ始めました。そして、今年は幼児クラスで劇場ごっこに取り組んでみようということになりました。それにむけて、とても長いお話なので、自分達で身近に手にとって読めるように、私が少し短めの絵本へと文を打ちかえる作業を年末に行いました。

 そのとき、ふと思い出したことがあります。それは、私が小学生だった頃のことです。しんしんと雪が降り続く、冬休みの朝に「森は生きている」というお話がテレビで放映されました。当時の私は、とてもこのお話が気に入り『森は生きている』という本を買ってもらいました。そして、夜寝る前に、何度も読んでいました。あるとき、学校で習ったローマ字をしっかりと覚えたいという思いと重なり、その日本語でかかれた文章をローマ字に置き換えて、ノートに転記してゆくことを始めました。頭をフル回転させローマ字を一字一字書くことは、大変だけれど、とても楽しかったことを覚えています。約30年たった今は、パソコンの画面を見ながら、ローマ字入力している・・・あの頃必死で覚えたローマ字が見事役立ち、園児のための絵本の文章を作っている!!その廻り合わせの不思議さを感じました。

 そして、何と、小学生の頃に見たであろうテレビのDVD版があるのも知り、取り寄せてもらうこともできたので見てみました。やっぱり、いいお話です。このDVDの裏を見て、びっくりしたことは、なんと「1956年 ソ連作」と書いてあったことです。もう半世紀以上前に異国で作られた作品だったのです。


 今回紹介した絵本に限らず、スロバキア民話をもとにしてできた『森は生きている』というお話は、(タイトルは違うものもありますが)絵本、文庫本、劇や、オペラなど、いろいろな形で日本でも根付いています。子どもから、おとなまで楽しめる名作だからこそなんでしょうね。さて、からたち保育園の子どもたちの心の中には、どんな風に、このお話が染み込んでゆくのでしょうか。そして、どんな風に演じてくれるのでしょうか?楽しみです。







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