だいすき!絵本

初瀬 恵美






絵:アルブレヒト・リスラー
原作:ドミニク・マルシャン
出版社:講談社



 早いもので、もう12月ですね。保育園ではイエス様の誕生を物語にした劇(クリスマス・ページェント)に取り組み始めました。この時期は、保育園の本棚にもイエス様の誕生を描いたものが沢山並ぶのですが、今月は、クリスマスの夜の不思議な出来事を描いた、心温まる絵本を紹介します。
 
 タイトルは『魔法の夜』。少し長くなりますが、ストーリーを紹介しますね。凍てつくような冷たい風が吹くクリスマスの夜。どの家も、まぶしいくらいにろうそくの明かりがともされ、皆、家路を急いでいました。しかしその中に一人だけ住む家もなく、あてもなく歩いている老人がいました。でも、この寒い夜に、一人だったのは老人だけではありませんでした。かれの足跡を追って、白い小さな犬がついてきていたのです。犬の首輪には、金色の星が光っていました。老人は犬に気がつくと瞳をかがやかせました。そして、犬と一休みし、パンを分け合ったり、いろいろな物語や歌をきかせてやりました。その後、どんどん寒くなってきたので、寒さをしのぐため粗末な小屋で犬と一夜を過ごすことにしました。夜がふけ、犬はふいに自分が魔法使いであることを老人に告げます。そして親切にしてくれたお礼に老人の願いを叶えてあげようと言います。老人は「昔から犬のともだちがほしかった」といいました。それを聞き、魔法使いの犬は長いことだまっていました。そして魔法の力をもつ金色の星のついた首輪をはずし、老人の友達になることを決心するのです。

 老人と魔法使いの犬の心温まるお話です。家もお金もない老人が望んだことは、「犬の友達がほしい」ということ。それに対して、魔法使いの犬は、魔法で別の犬を出すでもなく、魔法が使えるままで友達になるでもなく、魔法を捨てて、老人と友達になる道を選んだのです。これは、私の単なる思い込みなのですが「魔法使い=永遠の命(または、長寿)をもっている」、「首輪をはずす=短命(限りある短い命)」をイメージしました。そして「魔法」と「命」を引き換えにしても、老人が望む本当の「犬のともだち」になりたいと、長いことだまりながら考えたのではないかと思いました。

 そんな思いを巡らしながら読んでいると、胸を打つ暖かさがこみ上げてきました。最初、ここに結論まで書いていいものか迷ったのですが、この思いを伝えたくて書いてしまいました。ぜひ実際に絵本を読んでほしいと思います。

 絵はパステルで描かれており、とても柔らかで暖かく、なんて絵本にぴったりなんだろうと思いました。ろうそくの柔らかな明かり、老人や犬の柔らかな表情、最後のページの柔らかな朝焼け、至るところに柔らかさと明るさがあることも大好きです。

 忙しい師走こそ、この心温まる『魔法の夜』を読んで「真の優しさ」に触れてみてはいかがでしょうか。




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