だいすき!絵本

初瀬 恵美



『だめだめネコはこまったゾウ』
さく・え:はらだゆうこ
出版社:旺文社創作童話



 新年度がスタートし、2ヶ月がたちました。最近では、新入園児さんが、担任のもとから離れて、私が仕事をしている事務室に遊びに来てくれるようになりました。1人でこっそりくつろぎにきたり、友達を引き連れて、いたずらをしにきたり…。ようやく、園生活になれ、園での居場所を拡大し、第2のお家として、楽しんでくれることを嬉しく思います。


 さて、話は変わりますが、今月は『だめだめネコはこまったゾウ』を紹介したいと思います。

 今月の絵本は、タイトルが表すとおり、「だめ」「だめ」というネコにみんな困るお話です。ネコは最後にはひとりぼっちになってしまいます。そのとき、みんながネコのためにしてくれたことや、楽しかった思い出を思い出します。そして、みんなに悪いことをしてしまったと初めて気がつき、泣きながらあやまります。その姿に、いつの間にか動物達が集まり、仲直りするというお話です。

 ネコは最初、動物たちと踊っているときに「みんなの かたちが バラバラで、わが きれいに みえないよ。」といいます。このとき、ねこは「きれいに見えるようにはどうしたらいいか」と思い考えるのです。しかし、出てきた言葉は「やい、キリン!おまえは ひとりだけ くびが ながいぞっ!」「それから、ゾウ!おまえは ひとりだけ はなが ながいぞっ!」というような、その人自身の容姿を批判する言葉でした。このように、次々と友達の容姿を批判してゆき、気がついたら、一人ぼっちになっていたのでした。

 一人になってみて、思い出したことは「おなかが すいた とき、キリンが ながーい くびで きのみを とってくれたこと」「なつの あつい ひに、ゾウが ながーい はなで みずを かけてくれたこと」など、自分が否定してしまった容姿のことでした。その容姿のおかげで自分は、みんなと楽しく遊んだり、喜んだりしたことがあると次々と気がついてゆきました。そして、ネコは初めてみんなに悪いことをしてしまったと気がつきました。

 このように、お友達を傷つけてしまった後に、自分一人で考える時間があって、後悔する気持ちが湧き出してきて、自分の間違いに気がついてゆく・・・そんなプロセスを大切に描いてある絵本です。そして、後悔とともにあふれ出す涙と「ごめんなさい」という言葉は、とても重みがあり、よく伝わってきます。

 単に「悪いことをしたら、ごめんなさいと言いなさい」というような、教育的な本でないところや、金子みすずさんの『わたしと小鳥とすずと』に出てくる「みんなちがって、みんないい」のフレーズを思い出させるストーリーがとてもいいと思いました。




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