だいすき!絵本

初瀬 恵美



文:伊沢尚子
絵:及川賢治
出版社:福音館書店


 今年度も残り2ヶ月となりました。この時期になると各業者から、新年度の月刊絵本(見本)が届きます。うちの園では、数年前まではこれらの月刊絵本の中から1冊を担任が決めて全園児に購入してもらっていました。しかし、月刊誌は薄くて耐久性が弱かったり、月による当たり外れが多かったりすることから月刊誌をやめ、それぞれの年齢にあった絵本を厳選して、ハードカバーの絵本を年に4冊(3ヶ月に1冊)購入してもらうことにしています(自由購読)。そんな経緯を毎年業者さんにお話しするのですが、「園として一冊」とか「個人で注文されてもよろしいので」などと言って、見本を置いていかれます。今年も、そんな絵本がいくつか届きました。それぞれ見てみると、素敵な絵本が確かに沢山あるのです。そんなときは、心が揺らぎます。
 
 そんな絵本の中から1冊、選ばせていただいたのが『バナナのはなし』です。どこがそんなによかったのかというと、出だしのインパクトです。心をつかまれました。
 
 「ひやしたらおいしいかな?」バナナをれいぞうこに いれてみた。

  いっしゅうかんご。くろくなっていた。(下絵)



 ドキドキ、わくわくの出だしから、つぎのページをめくるとまっくろなバナナ。「購読見本(次年度4月号)なのに、この展開!!」という予想外のインパクトに心をつかまれました。(冷蔵庫に入れると黒くなるのは知っていましたが、なんとか、おいしく食べる方法がでてくるのだろうと期待をもって、ページをめくったのでびっくりしました)一緒に読んでいた子どもは「冷凍バナナ」を想像し「カチン カチンになっておいしいよ」と言っていたのですが、ページをめくって真っ黒なバナナがでてくると、「あーぁ・・・真っ黒で、腐っちゃった」と目を点にしていました。
 
 そんな大きなインパクトを与えたあと、おはなしは「バナナはあついところで そだつ。だからさむいのは にがて。ひやすと よわって、かわが くろくなる。でもくさっては いないよ。」「よかった」とつながっているので、子どもも本当に「よかった」と胸をなでおろしていました。
 
 こんな風に、多くの子ども達が大好きな「バナナ」にスポットあてて、今まで知らなかったいろいろなことを楽しく教えてくれる絵本です。

 作者は、実際にバナナの現物を切ったり、食べたり、ルーペで見たり、いつもバナナをそばにおいて作ったそうです。そして「まずは、ポップな絵本の世界をお楽しみください。そのあと、今度はバナナを用意してお読みください。絵本で読んだことが実際に確認できる楽しさも味わっていただければと思います。」と作者はコメントされています。




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