だいすき!絵本

初瀬 恵美  




『むしたちのうんどうかい』

文:得田之久/絵:久住卓也

出版社:童心社



  夏の暑さも幾らか和らぎ始め、朝晩は涼しい風が感じられる季節になりましたね。

 さて今月は、運動会の月!ということで『むしたちのうんどうかい』という絵本を紹介します。

 この絵本の文を書かれている得田之久氏は、保育園でも人気の『昆虫-ちいさななかまたち−』の文と絵を手がけている人でもあります。得田氏の描く昆虫の絵は、本物のようで、とても繊細な絵です。そのような絵を描ける方が、何故、可愛らしい絵を描く久住氏と一緒に絵本を出版されたのかとても不思議でした。そこで絵本を取りよせてみました。すると、絵本には、『「虫が好き」「自然が好き」になってほしい』というタイトルがついた得田氏のメッセージと、絵本に登場する「むしたち」が愛らしく描かれた一枚の紙が入っていました。そこに、その答えがかいてありました!そのメッセージに心を打たれ、1人でも多くの方にこの絵本の思いを知ってほしいと思いましたので以下原文そのままに紹介します。



「虫が好き」「自然が好き」になってほしい

 ちょっと前まで、日本では昆虫好きの子どもが、ちまたにあふれていました。夏ともなれば、麦わら帽子をかぶり片手に虫かご、片手に網を持った子どもが、元気に野山を走りまわっていました。

 私たち日本人にとってこの当たり前の光景は、実は世界ではたいへん珍しいことだったのです。私たちは昔から、蛍狩り、せみとり、とんぼ釣り、くも合戦、鳴く虫の飼育など、虫との交感をする文化をたくさん持っていましたが、このような国民は、世界では日本だけだったのです。

 エコロジーという考えを知るずっと以前から、日本人が自然を大切に残してきたのは、こうした文化をとおして自然への関心や、愛でる気持ちを育ててきた子ども達が大勢いたことと、おおいに関係があることだと思います。

 ところがたいへん残念なことに、いつのまにか虫を嫌がったり、自然への関心を持たなくなった子どもが急激に増えてきました。それは自然が少なくなったという要因以上のスピードだと思われます。

 「虫嫌い」はやがて「自然嫌い」になってしまうでしょう。なぜなら虫の嫌いな子どもは、どんなに美しい草原や林でも入るのを嫌がるでしょうから。(虫のいない自然などありえませんからね)

 この絵本は、虫嫌いな子どもや虫に関心のない子どもたちにも、少しでも虫に親しんでもらえたらという願いをこめて、ちょっと人なつっこくユーモラスにつくってみました。

 この絵本で虫が好きになった子どもが、やがて「自然が大切だから守ろう」ではなく、「自然がすきだから大切にしよう」になってくれることを、期待しています。
                                                        得田之久




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