だいすき!絵本

初瀬 恵美




再話・絵:加藤チャコ
出版社:福音館書店



 草木が緑を増し、お天気のよい日はすでに初夏を感じさせる陽気となりましたね。先日、阿蘇のほうへ行くと、小川からカエルの鳴き声が聞こえてきました。久しぶりにカエルの鳴き声を聞き、さらに夏が近づいた感じがしました。
 
 今月はカエルが主人公のお話『おおきなカエル ティダリク』を紹介します。この絵本はオーストラリアのアボリジニ・ガナイ族の昔話です。
 
 昔、昔のそのまた昔。果てのない大平原に、ティダリクという どでかい岩山のようなカエルが住んでいました。大平原は、来る日も来る日も かんかん照りで雨が降りません。ティダリクは、のどがからからで池の水も小川の水も大平原の水という水をすっかり飲み干してしまいました。だから他の動物たちは、みんな、のどがからからでたまりませんでした。そこで、ティダリクに水を分けてくれるように頼みました。しかし、ティダリクは「やんだ」と首を振り動物たちに水を分けてやりません。動物たちはひどくがっかりして、どうしたもんだかと、みんなで考えました。そして、笑わせれば水をお腹から噴き出すのでは?という名案が、かしこい年寄りのウォンバットからでました。果たしてどんな風に笑わせるのか、そして、みんなは水を飲むことができたのか・・・?ティダリクと動物達とのやりとりが、子ども達の心をひきつけるストーリーとなっています。

 あらすじを、ざっと紹介してみましたが、文章を読んでいて「あれ?」と不思議に思われたことはありませんか?なぜ水を飲んでしまっているのに、笑わせるとお腹から吐き出すのか?という点です。普通ならありえないですよね。ある意味、絵本だし、昔話だからこその展開かなと、今までは思っていました。しかし、今回『だいすき!絵本』を書くにあたり、ちょっと調べてみると、意外な事実が判明しました。この絵本に登場するカエル「ティダリク」はオーストラリアに住む「Water Holding Frog」というカエルがモデルのようで、そのカエルは砂漠地帯に生息し、体の中に水をたくわえているそうです。そして、人が体を少し押すと中から水を出すということが分かりました。そんなカエルがいるということを、みなさんはご存知でしたか?私は知りませんでした。このお話では、人が体を押したわけではありませんが、お腹から水を吐き出すことができるカエルが存在することにびっくりしました。そして、国境を越えて伝わった昔話は、その土地の面白さがつまっていていいなと改めて思いました。

 また、登場する動物たちは、コアラ、カンガルー、ウォンバット、エミュー、エリマキトカゲ等などと、オーストラリアを代表するような動物たちで、そのユニークで愛らしい絵にも注目です。

 笑いの大切さ、異国の動物達、日本の昔話と少し違う異国の昔話をぜひ楽しんでみてください。




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