だいすき!絵本

初瀬 恵美





『だいじょうぶ だいじょうぶ』
作・絵:いとう ひろし
出版社:講談社

  早いもので、もう3月ですね。年長さんは、保育園での生活も残り1ヶ月となりました。今月はもうすぐ一年生になる子どもたちの保護者の方へおすすめしたい『だいじょうぶ だいじょうぶ』(作・絵:いとうひろし、講談社)を紹介します。10月に紹介した『いいから いいから』と言葉の雰囲気が似ていますが、『いいから いいから』はとにかく明るく!楽しく!のハイテンション絵本で、今月の『だいじょうぶ だいじょうぶ』は、やわらかく、しっとりとした、優しい雰囲気の絵本、と受ける印象は全く違います。でも、どちらもいい言葉で私は大好きです。

 主人公は、表紙の絵の「ぼく」と「おじいちゃん」です。「ぼく」が「赤ちゃんに近い頃」から「一人でバスがのれるようになるころ」までの、「ぼく」と「おじいちゃん」の関係を描いた絵本です。「ぼく」の成長と「おじいちゃん」の老いが、時の流れを明確にし、読み終えた後は、思わずほろりときてしまいそうでした。
 
 絵本の内容を少し具体的に紹介しますね。「ぼく」がずっと 赤ちゃんに近く、「おじいちゃん」が今よりずっと元気だった頃、「ぼく」と「おじいちゃん」は、毎日のように、お散歩を楽しんでいました。でも、「ぼく」が少しずつ大きくなると困ったことや、怖いことにも、出会うようになりました。そのたびに「おじいちゃん」は、「ぼく」の手を握り、おまじないのようにつぶやくのでした。「だいじょうぶ だいじょうぶ」と。「だいじょうぶ だいじょうぶ」といってくれるおじいちゃんに支えられながら、前向きに生活していると、いつの間にか困ったことは解決し、怖いことも思い込んでいたほど怖くないことを「ぼく」は経験を通して、学んでいきます。そして、結末は・・・。「ぼく」と「おじいちゃん」の絆の深さを感じさせる結末となっています。
 
 この絵本から、私が学んだことは、子どもの心の力になるということの、あるべき姿でした。可能性を信じてそっと手を握り「だいじょうぶ だいじょうぶ」と優しく支えてあげると、子どもは自分でいろいろなことを学んでゆくもんだなということ。「だいじょうぶ だいじょうぶ」という言葉は、絶対的な信頼感を送る(贈る)ことのできる言葉なんだな、ということに気付かされました。
 
 これから、小学校にあがる子どもたちは、新しい環境の中で、ときには戸惑ったり、臆病になったりすることもあると思います。また、悩んだり傷ついたりする日もくるかもしれません。そんなときは、この絵本の「おじいちゃん」のように、「だいじょうぶ だいじょうぶ」と優しく支えていただけたらと思います。

 子どもの心に寄り添いながら「きみならだいじょうぶだよ」というメッセージを送り(贈り)続けることができたら、子どもにとっても、送り(贈り)続けた人にとっても、そして周囲にも幸せが訪れると、この絵本は教えてくれています。 皆さんもぜひ、読んでいただいて、「おじいちゃん」の魔法の言葉を体験してみてください。




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