だいすき!絵本

初瀬 恵美




『ざりがにのおうさま まっかちん』
作・絵:おおともやすお
出版社:福音館書店


  先日は、運動会お疲れ様でした。沢山の方にあたたかく見守られ、緊張の中にも、笑いあり、感動ありの、楽しい運動会だったと思います。

 今年も、年長の子どもたちは、跳び箱や板のぼりなどに挑戦しました。しかし、全員が一度できれいに決めることができたわけでなく、失敗してしまう子もいました。しかし、その子たちは、恥ずかしさや悔しさのあまり諦めてしまったり、その場を逃げ出すことはしませんでした。必ず「もう一度頑張ろう」「今度こそはクリアするぞ!」と再挑戦する姿をみせてくれました。涙がでそうでも、涙をこらえ、頑張る子もいました。ですから、失敗したことを、誰一人として非難する人はいなくて、逆に失敗してしまった子どもたちも、観客の方々や園児のみんなから温かい声援をもらい、一度ダメでも、二度ダメでも頑張る力を見せてくれました。そして、成功を成し遂げてゆきました。その頑張りを見守る会場の緊迫感や、成功した時のみんなが一緒になって喜び合い、拍手喝采しあう、温かい運動会に本当に感動しました。「一度で成功すること」に美徳を置くのではなく、「失敗しても頑張る」「失敗しても支えてくれる人たちがいる」「見守ってくれる人たちがいる」という経験ができる良い場になったと思います。そしてそれは、将来困難に立ち向かうバネになるんだろうなと思いました。

 前置きが長くなりましたが、今月はその感動を胸に、絵本も、失敗にもくじけず、周囲から支えられ頑張る姿を描いた本がないかと思い、探して、選んでみました。そして見つけたのが『ざりがにのおうさま まっかちん』です。

 この本は埼玉県坂戸市の「はちの巣保育園」の実践をもとに書かれた本です。この本のテーマは運動会ではなく、「ざりがにつり」です。
 
 はちの巣保育園の近くに、まっかちん沼があります。子どもたちは、ここでざりがにつりをするのが大好きです。皆はざりがにのことをまっかちんと呼んでいます。主人公は年中組の「のぞみ」。のぞみも、まっかちんつりが大好きなのですが、クラスで1人だけ、まだざりがにをつったことがありません。何日も、何日も、何回も、何回も失敗し、それでもあきらめない、のぞみの心の葛藤や、周囲の励まし、支えなどを描いています。

 人は、人生の中でいつも「できる側」にいられるとは、限りません。絵本を通して「できない側」の気持ちも知って、共感することや、運動会のような体験を通して、心に幅を持っていって、困難に立ち向かう力を養ってほしいと思いました。





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