だいすき!絵本

初瀬 恵美




絵:安野光雅
出版社:福音館書店

 みなさんは、どんな年末年始を過ごされましたか?私は今年も、岐阜へ里帰りしてきました。しかし、年末年始は天気が大荒れでしたね。私が里帰りした大晦日は、福岡の都市高速道路では、突風で車が横転する事故がありました。そして飛行機も中部国際空港へ到着できるかどうかわからない程でした。無事到着できて、一安心した次の日は、雪と強風の元旦でした。それでも、子どもたちは熊本ではあまりみることのできない雪に大はしゃぎでした。天気にふりまわされながらも、ゆっくりできたお正月でした。

 さて、今月は、ゆったりとした癒し系の『旅の絵本』(絵:安野光雅、福音館書店)をご紹介したいと思います。この絵本は、一昔前のヨーロッパの風景が描かれています。この絵本を始めてみたとき、繊細で、きれいで、とても気に入りました。あたたかみのあるヨーロッパの風景をどんな方が描かれたのだろうと思い、著者をみてみると、何と日本人でした。意外でしたがそれ以来、安野さんの絵が大好きになりました。この絵本は、絵本を開いても文字がありません。だからこそ、本当に絵画のような絵本なのです。左から右へと絵をゆっくり、じっくりみてゆくと、一人の旅人がたどったあしあとがよく分かります。風景、建物、人と人とのやりとりなど実に詳細に描かれています。また、ページの途中には、『おおきなかぶ』や『あかずきんちゃん』などの物語の主人公も描かれており、美しい絵の中にみつけた遊び心に、作者のユーモアを感じました。このように、絵の中に盛り込まれたいろいろなエッセンスを感じとりながら、楽しんでゆける素敵な絵本です。

 1977年に中部ヨーロッパを舞台として出版されたこの『旅の絵本』を始めとして、2004年までに、イタリア、イギリス、アメリカ、スペイン、デンマークと6冊の絵本がシリーズとして出版されました。27年の歳月を経ても作品の持ち味は変わらず、まさに絵をみながら、一昔前の国々の旅を楽しめる絵本は、芸術作品だと思います。

 実際『旅の絵本』は「国際アンデルセン賞」(1984年)をしています。その他、安野さんは「最も美しい50冊の本賞」(米)や1988年には、紫綬褒章も受章されています。数々の受賞歴の持ち主なのです。

 私が今一番気になっているのは、安野さんの生まれ故郷である島根県の津和野にある「安野光雅美術館」です。この美術館は、すぐその場で製作できるアトリエがあったり、昔の小学校の教室を模した部屋やプラネタリウムがあるそうです。「沢山の方々の空想の場、創造の場、学びの場として得ることの多い美術館にしたいと心から願っております」と館長の大矢さんがホームページに書かれていましたが、その精神とこの絵本は相通じるものがあり、ぜひ、行ってみたいなと思いました。

 新年が始まり、あわただしい毎日も始まったかと思いますが、たまにはお子さんとゆったり文字のない絵本の世界を楽しんでみてはいかがですか?子どもには大人にはない感性や目線があり一緒に見ていると、とても楽しいと思いますよ。安野ワールドをぜひ楽しんでみてください。




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