だいすき!絵本

初瀬 恵美



『ぜったいたべないからね』
作・絵:ローレン・チャイルド
出版社:フレーベル館


 暑い夏も終わりに近づき、朝夕は、少しずつ秋めいた風が感じられるようになりましたね。

 今月は「食欲の秋」にちなみ、「食」をテーマにした絵本『ぜったいたべないからね』(作:ローレンチャイルド、フレーベル館)を紹介します。

 みなさんの周りには、好き嫌いの激しい人がいませんか?この物語の主人公である妹のローラもかなり好き嫌いが多いのです。「あたし、たべないからね。まめも にんじんも じゃがいもも、きのこも スパゲティもたべないからね。たまごもソーセージもダメ。カリフラワーだって キャベツだって、にまめだって たべないからね。バナナだって オレンジだって、それから れいの トマト!ぜーったい、たべないからね」という具合に。半端じゃない好き嫌いの多さですよね。そんなローラを家において、両親は「ごはんをたべさせておいてね」と、ときどき簡単に出かけてしまいます。それは、お兄ちゃんのチャーリーにとって大変なこと。ある日、お兄ちゃんはいいことを思いつきます。食べ物を突拍子のないものに見立てるのです。例えばにんじんは、「にんじんにみえるかもしれないけど にんじんじゃない。それは、はるばる もくせいからとどいた“えだみかん”だよ」という具合に。それが、妹の心をくすぐり「ひとくち かじってみようかな」という気持ちにさせたのです。

 「ぜったい たべないからね。」という頑固な妹と、その妹の心をくすぐり、次々に「食べてみたい!」という気持ちにさせてしまう、お兄ちゃんのユーモアたっぷりの会話に、ついつい絵本の世界にのめりこんでしまいます。そして、最後には最大級のユーモアが飛び出します。チャーリーとローラの楽しい世界をお楽しみ下さい。

 保育園でも、ローラ程ではありませんが、好き嫌いのある子がほとんどです。むしろ、嫌いなものが一つもなく、何でも食べる保育園児は、ごく稀だと思います。大人だって、ほとんどの人が多少の好き嫌いありますよね。

 そんな中、私たちの園では、食事の進め方について次のような配慮をしています。例えば、0歳〜1歳では、何よりも「自分で食べる」という意欲を大切にする。1歳後半〜2歳児は、「これは好き」「これは嫌い」「もうお腹いっぱい」「ごちそうさま」など、自分の言葉で言えることを大切にする。4〜5歳児になると「これを食べると○○にいいんだよ。」と栄養的なことを伝えたり、栽培活動、調理活動、絵本等を通して食への興味や意欲を育て、子どもが自分の意志で「少し食べてみようかな」と感じられるように食事の場面以外の色んな側面からも援助していくように配慮しています。そして、食事の時間は、栄養を取り込むことに必死になりすぎて「心を育てる」ということを忘れないように、楽しい時間にしたいと思っています。

 しかし、理想を抱きつつも、見た目だけで「いらん」という子どもを「一口だけでもたべてみよう」と思わせるのは、大変なことです。このお兄ちゃんチャーリーは、本当に凄い!!というか、絵本作家のローレン・チャイルド氏の発想はすごい!!です。お子さんの偏食に悩んだり、イライラしてしまう方がいらっしゃったら、ぜひ読んでみてください。そんな子どもとおおらかに向き合えるヒントが沢山つまった絵本です。




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