だいすき!絵本  

   初瀬 恵美


『ラチとらいおん』
文・絵:マレーク・ベロニカ
訳:とくながやすとも
出版社:福音館書店

 私の二人の娘は、小学校5年生と3年生になるのに、いまだに怖がりです。小学校3年生の娘は、家の中にトイレがあるのに、夜になると1人でトイレに行くのが怖くなります。小学校5年生の娘は、2階に誰かがいないと、2階に行くことをとても嫌がり、決まって誰かを誘います。誰もついてきてくれなかったり、どうしても欲しい物があると意を決して行きますが「そこまで、覚悟を決めていかなくても大丈夫でしょう」と、あきれるくらいです。私が子どもの頃、トイレは外にありました。しかも、私の実家はお墓の少し裏にある上、当時のお墓は土葬だったので、いろいろな噂話も聞きました。しかし、噂話のちょっとした恐怖を抱えながらも、一人でトイレに行っていたものです。そんな私だったので子どもの異常な程の怖がりは「理解できない。」と常々思っています。しかし、夫は子どもたちに「分かるよ。お父さんも怖がりだったから。」と、いつも子どもたちの味方をしてくれています。子どもたちの「怖がり」はお父さんゆずりのようです。

 今月紹介する、『ラチとらいおん』(文・絵:マレーク・ベロニカ、福音館書店)の主人公ラチもとても、怖がりやです。怖がりやどころか、犬も、暗い部屋も、友達でさえもこわがる、世界中で一番の弱虫な男の子です。そのラチのところへ、ある日小さな赤ライオンがやってきます。赤ライオンは小さいのですが、とても強く、ラチは、そのライオンの助けをかりて、心も体も強くたくましくなっていくお話です。ラチとらいおんとの友情物語も読みどころで、最後はジーンと胸が熱くなる絵本です。

 この絵本を久しぶりに読んでみたのですが、絵本を買った当時の事を思い出しました。この絵本を買ったのは、小学校5年生の娘がまだ、保育園の頃のことでした。弱虫なラチにそっくりな娘だったので、ラチを自分に重ね合わせて、楽しんでくれたり、勇気付けられてほしいと思い選んだのでした。そして、怖がりなのは、自分だけじゃないということを、絵本を通して感じてもらえればいいな、とも思っていました。その当時の自分を思い出すと、自分で言うのも変ですが、子どもの中にある「恐怖」を感じられる優しい母親だったような気がします。「らいおん」に近い存在だったような・・・。今は「小学生なんだから・・・!」が先にたって、「怖い」という気持ちを共感できず、ちょっと馬鹿にしていました。夫は、今も変わらず「らいおん」に近い存在なので、本当に凄いなと尊敬します。子どもはいつかは巣立ってゆくものなので、心も体も強くなる支えとなれるような存在でいたいものだと、この絵本を通して思いました。購入したときは娘のためと思いましたが、数年経ち私が逆に教えられるものがありました。絵本は、読むときにより感じ方が変わり教えられることも変わるという、その存在の大きさも改めて感じさせられました。ぜひ、怖がりのお子さんがいらっしゃるご家庭の方、また昔怖がりだった大人の方々も読んでみてください。




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