だいすき!絵本
初瀬 恵美
作:山下明生
絵:いわむらかずお
出版社:ひさかたチャイルド
先月は、朝から車のフロントガラスに霜がつくような寒い日が少なく、日中は、日が照ると比較的暖かかったですね。今月は、一年で一番寒いといわれる月です。そこで、寒い冬ならではの楽しみを描いた『ねずみのさかなつり』(作:山下明生、絵:いわむらかずお、出版社:ひさかたチャイルド)を紹介します。
この絵本は、「2(ふた)ごよりも 3(み)つごよりも 5(いつ)つごよりも もっとおおい、7(なな)つごねずみのおはなしです」いわむらかずおさんのねずみといえば、ご本人作・絵の「14ひきシリーズ」が有名ですが、山下明生さん作で、「7つごねずみ」のシリーズの絵も描かれているのです。
「7つごねずみ」たちは、お父さんとお母さんと合わせて、9匹暮らし。一方「14ひきシリーズ」は、お父さん、お母さん、お爺さん、お婆さん、そして兄弟10匹の14匹暮らしです。どちらも、家族の愛情や、自然の中で暮らす素朴さがいい味を出しています。似たようなシリーズですが、私的には、「7つごねずみシリーズ」は、何気ない家族の会話が沢山詰まっていたり、子どもらしさや家族同士の思いやりが、文にも絵にもとてもよく描かれた素敵な絵本だと思います。一方「14匹シリーズ」は、文は控えめで、絵の中にある描写を楽しんだり、絵そのものが繊細で美しく、自然のもつあたたかさが心を掴んで離さない絵本だと思います。
前置きが長くなりましたが、あらすじを紹介させていただきます。寒い冬、氷の上を滑っていると、氷に穴をあけて、魚釣りをしている、いたちの親子に出会います。その日、家に帰ってから、お父さんに魚釣りに連れて行ってと頼みます。しかし、お父さんは仕事でいけません。お母さんにお願いすると、「ざんねんだけど、おかあさん、みずうみなんかにいったら、つるつる ころんでしまうわ。こどものころは、さかなつりだいすきだったんだけどね。」との返事。そこで、子どもたちとお父さんは、お母さんが魚釣りに行ける様に考えるのです。さて、その考えとは・・・。
魚釣りをしたい一身で、お父さんに協力してもらいながら、子どもたちはあるものをつくります。しかし、7匹もいれば、みんな真剣に取り組むわけではなく、末っ子と思われるねずみは、釣竿で遊んでいたりする様子も描かれています。そこが、この絵本のいい持ち味だと思います。7匹それぞれの個性が絵に描かれており、1匹ずつの個性探しをしながら、絵本を見るのも楽しいと思います。
また、熊本は暖かいので、「湖が凍る」現象はみられないでしょうが、絵本を通じて子どもたちが、こんな冬もあるんだなと、感じてくれたらいいなと思います。